産業再生論:銭湯は再生可能な有望業種だ
銭湯というとの日本の誇れる文化である一方、事業継続に苦戦し、廃業が相次いでいるという印象があります。全国公衆浴場業生活衛生同業組合連合会(全浴連)によると、銭湯は1968年に1万7999軒を数えましたが、常連客の高齢化と人口減少が進み、高額な設備改修や更新費用もかさんだうえに、経営者の高齢化も追い打ちをかけ、廃業や転業が増えています。
銭湯の軒数は1969年から53年連続で減少をたどり、1991年に1万軒を割り、2022年は1865軒とピークのほぼ10分の1になっています。
一方で2021年度の銭湯(一般公衆浴場業)の倒産(負債1000万円以上)は1件しかありません。銭湯の過去20年間の倒産は、2006年と07年の9件がピークで、10軒を上回ったことはありません。銭湯を運営する事業者の多くは個人経営で、体力の問題から廃業や転業の選択をしていることが推察されます。
また、事業者の多くは不動産を所有しており、銭湯の資産を活用して不動産賃貸業などへ転業するケースも多い模様です。低金利の長期化による都市部の地価回復も銭湯減少に追い打ちをかけていることは否めません。
一方、大型の健康ランドやスーパー銭湯が各地で賑わいをみせています。このことは、銭湯への需要が存在していることを示唆しています。
では、銭湯とスーパー銭湯の一番の違いは何でしょうか。規模の違い、お風呂の施設の違いもありますが、料飲施設など一日遊べる付帯施設であることはいうまでもありません。しかし、銭湯にそこに投資する余力はありません。そこで考えられるのが地元企業とのコラボです。
先日の椎名町での自主隔離でスモークビアファクトリーの醸造所を紹介しました。
このスモークビアファクトリーの第一醸造所は大塚にあり、椎名町は第二醸造所になっています。NAMACHAんのキャラクターがおかずクラブのオカリナを思わせ、それだけでも興味を引きますが、店頭に貼ってあったポスターに「妙法湯」という銭湯とのコラボが紹介されていて気になり行ってみました。
ビールといえば、やはり風呂上りの一杯ですが、なぜか銭湯というと牛乳のイメージが強いです。そいうえば、以前NHKの「チコちゃんに叱られる」で「風呂上りに牛乳飲むのに腰に手を添えるのはなぜ?」というのがありました(答えは「牛乳瓶の広い口が鼻に当たって邪魔なので、自然に反り返って飲むようになってしまうが、腰に手を当てると反り返りやすいため」だそうです)。
関係ない話に脱線してしまいましたが、「銭湯で風呂上りにビール一杯」といかないのはなぜでしょうか。一つには酒販免許の取得に及び腰の経営者の方が多いことと思われます。ちなみに、免許の取得には以下の要件があります。
①場所の要件
②人の要件
③経営の要件
④需給調整(製造量)の要件
このうち、場所の要件については、かつては人口要件(基準人口当たりの免許数)、距離要件(隣の酒販店と一定の距離が必要)などがあり、免許の取得が難しかったのですが、現在は廃止されるなど規制緩和が進んでいます(行政側としては税金のとりっぱぐれを懸念していたのでしょうが、これがかえって既得権者を守ることになってしまっていました)。
また、「人の要件」としては、酒を扱った経験が求められています。しかし、これは研修会に参加すればクリアできるようです。今では行政書士さんなど、酒販免許取得をサポートしてくださる専門の方も増えてきているようです。
さて、妙法湯ですが、醸造所より徒歩5分程度の場所にあります。
やはり風呂上りの一杯は最高でした。
ほかにもいろいろ様々なお酒が売られていました。
ちなみに妙法湯さんですが、私が行った時間は平日の18時台でしたがかなりの混雑(繁盛)でした。
今回はクラフトビールとのコラボをとりあげましたが、他にもコラボの対象はたくさんあるのではと思います(元コンサルタントとしては銭湯再生のアイデアはいくらでも思いつくことができ、楽勝の案件にすら思えます)。銭湯ファンとしては、全国の銭湯の皆さまに頑張ってほしいと祈念しているところです。
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