列車の切符が買えず町から出られない:しくじり先生の海外旅行(第10話)
中国といえば、広大な国土にもかかわらず鉄道網が発達している国として知られています。今日では日本やドイツの技術を使った(盗んだ?)高速鉄道網も充実し、IT技術の発達によりオンラインでの予約・発券もできるようになっています。しかし、昔は乗り心地が悪いうえに、オンライン発券ができず、列車のチケットを手配・入手するのが大変でした。私も友人から、中国の地方に行ったら列車のチケットが買い占められており大変苦労した話を聞かされていました。しかし、まさかそんなことはないだろうと思い、30年ほど前に無謀にも中国の中国鉄道の旅にチャレンジしました。
ちなみに私の中国語(北京語)はきわめて拙く、どちらかというと広東語の方が得意です。
最初は、香港と広州の間の往復でしたが、香港にある中国旅行社を通じて容易に手配できました。
二回目は上海から蘇州を経由し、南京まで鉄道で往復する旅でした。初めて中国国内でチケットを購入しましたが、上海、蘇州、南京ともに英語のできる駅員さんのいる外国人専用窓口があり、軟座(日本でいうグリーン車)の座席を手配でき、何も問題を感じませんでした。
しかし、三回目にはついに中国が牙をむきました。遼寧省と吉林省の鉄道の旅に出かけた際は、チケットの手配ができない事態に陥ってしまいました。最初は、北京経由で入り、遼寧省の瀋陽(昔の奉天)まで寝台車に乗りました。北京は上海と同様に外国人専用窓口があり、一番快適な軟臥(日本のA寝台のような位置づけ)が手配できました。瀋陽では、かつての満鉄の本社を望むことのできる旧大和ホテルに泊まることができ、ここまでは快適で楽しい旅行でした。
問題は瀋陽から先です。瀋陽からは北朝鮮との国境の街・丹東を目指します。いつものように瀋陽駅の外国人窓口に行きますが、言葉が全く通じません。しまいには「じゃまだあっち行け」という仕打ちを受けました。その時は、留学生と思われる西洋人のお姐さんが通訳してくれて丹東までのチケットを手配することができましたが、丹東では外国人窓口すらありません。途方に暮れていたら、駅前に「中国国際旅行社」の看板を発見。ここなら何とかなると思って訪ねてみますが、英語が全く通じません。
「弱ったなあ」と思っていたところ、突然「日本語できますか」と日本語で聞いてきました。「日本人ですけど」と伝えたら、先方は「早く言ってよ」と大笑いしていました。どうやら、英語は全くできないものの、日本語が堪能だった方のようです(かつて満州だった遼寧省には日本語が得意な方が多く、また日本語の習得が容易とされる朝鮮族の方も多く住んでいます)。翌日の発車時間までには手配しておくので早めに来てね、とのことで何とか手配することができました。そこそこ高額の手配料も請求されましたが、どうやら買い占めている元締がいるようで、裏ルートでチケットを手配していただいた模様です。
ちなみに、丹東でのホテルの手配や観光の相談にも乗っていただけました。「北朝鮮の観光ビザも出せる」とのことでしたが、当時の日本のパスポートでは北朝鮮への渡航はできず、パスポート更新したらまた来てね、とのことでした。でも、もし入国し、拉致されていたらと思うとぞっとします。ちなみに、ホテルでは北朝鮮のテレビ番組を視聴できましたが、電力事情の悪さから1日3時間だけの放送で、異様な放送内容だったのを覚えています
後年、職場の上司から教えていただいたのですが、中国のホテルではコンシェルジュに頼めば飛行機や列車の手配をしてもらえるとのこと。この時は懲りたので、瀋陽から北京までは飛行機を使い帰りました。
しくじり先生のレッスン
・いろいろと不便な発展途上国では、ホテルのコンシェルジュをうまく使いこなしましょう。
・友人の失敗談は聞き逃さないようにしましょう。
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