あちこち旅日記

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地方交通論:バラエティ番組「ローカル路線バスの旅」を見て思う

 私が好きなテレビのバラエティ番組の一つに、TV東京系の「ローカル路線バスの旅」があります。この番組は、初期の頃から見ており、何よりガチンコ勝負なのが大好きです。2日間コースの鉄道との対決旅や陣取り合戦などの派生番組もそれなりに面白いのですが、4日制のオリジナル版とはフルマラソンvsハーフマラソン、15人制ラグビーvs7人制ラグビーのような差があります。出演者の方だけでなく、ゴールできるか失敗するかぎりぎりのコース設定をするスタッフの方の準備も大変だと思います。



 さて、この番組を初期の頃から見ていて感じるのですが、年々難易度が増し、バスがつながらず歩くことが当たり前になり、かつ徒歩の時間距離が長くなっています。明らかに、地方のバス路線の廃止が相次いでいることを示しています。


 昭和時代にはマイカーの普及や鉄道路線の新規開業がバス路線の廃止の原因になっていましたが、今日では地方部の人口減少によるところが大きくなっていることはいうまでもありません。また、利用者の減少→運航本数の減少→利用者のさらなる減少→運休や廃止、といった悪循環も起きています。


 特に深刻なのが病院への通院が必要な高齢者の足が奪われてきているということです。このため、本来ならば運転免許の返納が望まれる高齢者が自分で運転せざるを得なくなり、事故が起きる危険性も強まっています。
 
 地方の公共交通機関廃止の影響を受けているのは、地方の方だけではありません。全国各地や海外から訪れる観光客も大きな影響を受けています。実際に観光庁がコロナ禍前に行ったアンケートで、都市部と比べて地方部で外国人の不満が大きいものに、公共交通機関が挙げられていました。


「レンタカーを使えばよい」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、慣れない土地での運転は不安を伴います。ましてや、交通ルールや標識が異なる外国人観光客(日本のような左側通行の国は少数派です)に運転をさせることは危険ですらあります。事故が起きた場合の対応にも言語の問題もあります。地元の歩行者をはねてしまっても、救急車が呼べない可能性もあります。


 また、地方部では十分なタクシーの供給も出来ていないところもあります。そもそも言葉に自信のない外国人はタクシーは使いたがりません。一言も話さずに目的地まで連れていってくれる配車アプリを皆さん使いたくても、日本では白タクが禁止されているうえ、ウーバーや東南アジアで普及しているグラブと提携している日本のタクシーも限定されています。


 こうした問題は地方部の方も認識していらっしゃるとは思いますが、地方部へ行くと、意識のずれを強く感じる時があります。「どのくらいかかるのか」と聞くと、「ほんの4~5分」と答える地元の方もいますが、これは車でしか行ったことのない方の考えで、歩くと1時間かかったりします。


 インバウンド観光の支援だけではなく、地球温暖化対策を進め、高齢者の方の免許返納を促すためにも公共交通網の再整備が強く望まれます。乗用車の保有や使用を減らすためには、今では先進国の中では安い方にある日本のガソリン税の引き上げや、自動車保有への課税の強化、自動車通勤の社員の多い企業の事業所や自動車通勤する個人への罰則(課税強化)、なども経済学の教科書的には模範解答になると思います。しかし、明らかに不人気な政策を政府与党に期待するのは現実的ではありませんし、インフレへの懸念が高まっている中では難しいことは明らかです(かといって減税や補助金給付でガソリンの値段を下げるのは、需要の抑え込みができずかえって火に油を注ぐので賛成できませんが・・・)。


 もしこれを読んでいる自治体関係者やバス事業者の方がいらっしゃれば、今はせめて、ソフト面での公共交通網の整備に取り組んでいただけないでしょうか。①利用者が増えるような観光・商業施設を中心とした路線への再編成(政府も路線免許の審査も迅速化する必要あり)、②(異なる事業者間を含めて)バス・列車の乗り継ぎ時間をできるだけゼロに近づける(事業者間の協議機関を早急に設置)、③(異なる事業者間を含めて)乗り継ぎのコストをできるだけ少なくする(同一会社の路線間の乗り継ぎは原則無料にする)料金体系の導入(交通系カードは全国で共通化)、④IT技術の活用(乗客がいなければ運休し、いれば臨時便をいつでも運行くできるようにするオンディマンドシステムや、長距離路線を廃止して乗り継ぎを原則とする一方で区間ごとの本数にメリハリをつける、乗り継ぎ精算を効率的に行えるようにする)、などはすぐにでもできるのではないでしょうか。少しでも公共交通機関の利便性が増せば、運転免許の返納に応じる高齢者も増えてくるはずです。


 最後にバス旅番組で一番残念でならないのは、②に関して「他社の路線なのでよくわからない」と案内所や運転手さんが答えるシーンです。これくらいの情報を地域の関係者が共有することは、最低限期待したいところです。


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