あちこち旅日記

乗り物好きの旅行日記。コスパのよい贅沢な旅がモットー。飛行機、鉄道の搭乗乗車体験記やグルメ情報をご紹介します。

ふるさと納税を考える(3):サイト手数料に資金が流れているというのは本当?

 先週は、令和4年度(2022年度)の総務省の調査について採り上げました。ふすさと納税に関する全国自治体の平均の総経費率は46.4%、うち返礼品の調達費は平均27.3%で、送付費が7.7%、広報費が0.6%、決済費が2.2%、事務費が8.6%となっており、他自治体への資金流出を除けば赤字自治体はありませんでした。


 しかし、経費率の最高が75%となるなど、60%を上回る自治体が11市町村ありました。今回は、こうした経費が肥大化している自治体について採り上げます。


 まず、総務省の指針に反して、返礼品の調達費が30%を上回った自治体も56ありました(最高は53%)。中には、兵庫県洲本市(調達費44%)のように、別の費目として調達費を計上することで、総務省の指針に反したとみなされ、ふるさと納税から除外される処分を受けたところもあります。実際の平均調達費比率は総務省集計データをさらに上回っていた可能性もあります。




 一方で、調達先に配送を委託している自治体では、調達費に配送費が含まれている可能性もあります。実態がどうなっているかは、アウトサイダーには分かりにくく、総務省による監査や地方議会による監査を待つしかありません。


1.サイト手数料は必ずしも高くない
 経費率が異常に高い原因としては、いくつか考えられますが、報道等で問題視されているのは、ふるさと納税サイトに払う手数料です。


 この手数料について公表されているデータはありませんが、下記の記事のように5~15%という見方があるようです。




 一方、兵庫県宝塚市が2017年に行った業務委託公募では、手数料率が13.2%で一番低かった「さとふる」を選定したと情報開示が行われています。宝塚市の業務委託公募では、サイトへの掲載だけではなく、広い範囲での事務委託が行われています。総務省の発表での同市のふるさと納税経費率は、調達費29%、その他12%で合計41%となっています。その後、手数料率が改定された可能性があるほか、経費区分の定義がはっきりせず、調達費の中にもサイトへの支払手数料が含まれている可能性もありますが、おそらく大半の事務処理を業務委託することで、返礼品の調達とサイト手数料以外の経費はほとんどかかっていないとみられます。


 全国平均で調達費以外の経費率が合計19.1%であったことと比較すると、宝塚市はサイトに業務委託したことではるかにコストが安く済んだことになります。



 ふるさと納税を受け付けている自治体の大半はサイトを経由して受け入れています。ホームページに掲載している返礼品のリストを見て「寄附申込書」を郵送し、振込用紙を使って、寄附金を送金するという方法でも受け付けている自治体もありますが、多くの方はサイトを利用しているのではないでしょうか。


 実際に、自治体側も事務経費がかかる直接受け入れよりも、事務負担の少ないサイト経由での寄付を好む傾向になってきている模様です。
  
 こうした状況を鑑みると、サイトへの手数料が高額で、ふるさと納税で集めた資金の流出につながっているとの批判は的外れであると言えます。しかし、サイトにより手数料率が異なることも事実のようです。一つの自治体で複数のサイトを利用しているケースも珍しくありません。多くのサイトが新規参入してきたことで、手数料率には低下圧力がかかる一方、多くの寄付を集めるサイトであれば手数料率が高くても利用される可能性もあります。


2.自前主義がむしろ過大な負担を生む可能性も
 企業経営でも、一定程度の売上に達するまでは費用は変動費とし、内製化するのは一定規模に達しスケールメリットを発揮できるようになってから、というのは常識でしょう。しかし、一部の自治体では身の丈以上に自前でなんでもやろうとし、固定費を肥大化させているケースも散見されます。


 特に顧客(寄付者)管理、調達には、ITによる効率化が求められますが、自治体内でこうしたノウハウが蓄積されているとは思えません。こうした分野でのシステム開発は、当然スケールメリットが発揮される広域、県主導での取り組み、あるいは総務省が主導する取り組みが望まれますが、十分に行われているとはいえません。


 例えば、総務省ではふるさと納税のポータルサイトを設けていますが、そこでは制度の説明などに終始しており、自治体の具体的な返礼品リストが掲載されているわけでも、申し込みや決済機能があるわけでもありません。一部の県では、県のふるさと納税サイトに県内市町村のホームページのリンクをつけているケースもありますが、決済機能はなく、後は市町村任せとなっています。


 中には、カタログ販売業者のような立派な冊子を作っている自治体もあります。また、過去の寄付者に対して暑中見舞いや年賀状の送付まで行っている自治体もあります。こういった取り組みも費用対効果の点からは疑問視されます。



 もちろん、固定費に見合う十分な寄付額が集まっていれば問題はありません。人気のある自治体の中には総務省指針の「30%ルール」についてもこれを守った上で、(下記に指摘するような隠れ還元でなく)実質的な高還元を行っている(裏還元でなく)ところもあります。また、細かな気配りによりリピーターが多い自治体では、毎年寄付額を着実に伸ばしています。次回は、こうした実質還元率を検討してみたいと思います。


3.ポイントやギフト券による「隠れ還元」は問題
 ただし、注意すべきは、サイトを通じた「隠れ還元」が多く行われている可能性があることです。これには①アマゾンなどのギフト券の付与、②通常のクレジットカード決済よりも多いポイントの付与、などのパターンがあります。


 こうした還元はサイトやクレジットカード会社から寄付者に対して行われることになります。ポイント還元等によるプロモーション効果を享受しているのは自治体だけでなく、カード会社やサイト自体も同様ですが、そのコストを全て自治体が負わされているということに気がついていない方は多いのではないでしょうか。


 こうした隠れ還元を考慮すると、総務省が示す「30%ルール」に違反している自治体が多数あるのではないでしょうか。前章の最後に言及した望ましい実質的な高還元とは、ルール違反の隠れ還元とは違うものです。


 ところで、話は変りますが、日銀の調査によると、キャッシュレス決済が普及するための条件として「ポイント還元が増えれば」と回答している国民が多くなっています。しかし、このコストを最終的に負担しているのは、カード会社ではなく商店です。


https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/literacy_chosa/2019/pdf/19literacyr.pdf


 日本のクレジットカード決済の手数料率は3.3%(税込み)で諸外国と比べても高く、このためキャッシュレス決済に後ろ向きな商店が多くなっています。「ポイント還元が増えれば」キャッシュレス決済が普及するどころか逆効果になります。


 キャッシュレス決済の普及だけでなく、ふるさと納税制度を持続するためには、決済手数料の引き下げは必要でしょう。おそらく、いずれこうした隠れ還元はいずれ問題視され、規制される方向に向かうと思われます。


 少なくとも、ふるさの納税制度を維持し「隠れ還元」を防止するためには、サイト決済でのポイント付与を規制していくことはやむを得ないのではないでしょうか。


あちこち旅日記 - にほんブログ村


 参考になったら、「プロフィール」のバナーをクリックお願いします。過去の記事リストがあります。シリーズ通してご覧いただければ嬉しいです。

×

非ログインユーザーとして返信する