ふるさと納税を考える(最終回):コスパのよい返礼品の見分け方
これまで3回シリーズで、ふるさと納税の問題を採り上げてきましたが、今回はいよいよ返礼品の実質還元率についてです。
令和4年度(2022年度)の総務省の調査では、ふるさと納税に関する全国自治体の平均の総経費率は46.4%、うち返礼品の調達費は平均27.3%となっています。
返礼品の調達費については、総務省指針で上限が3割と定められています。ただし、ポイント付与などを使った「隠れ還元」が行われているケースや、先週報告した洲本市のように他の費用に調達費が振り替えられているケースもあります。実は本当の還元率がもっと高くなっている可能性もあります。
しかし、これは後ほど述べる私が注目している「実質還元率」とは異なる概念であり、邪道だと思っています。「隠れ還元」はいずれ問題視され、厳格に禁止される可能性が大きいのではないでしょうか。
しかし、自治体にとっても調達費比率が低ければよいというというものでもありません。調達原価を下げれば、同じ寄付金額でもいただける返礼品のレベルが低下するのは明らかです。結局、寄付金額が減少し、固定費負担が重くなり、総経費率が上昇してしまうことになります。
1.自治体の調達コストは卸値以下が妥当
ただし、この調達費の定義については明確な規定がありません。自治体が、小売販売価格などの実勢価格(市価)で調達してるのか、メーカーの卸売価格で調達しているのか、外部からはわかりにくくなっています。
ふるさと納税が、無店舗小売業に相当するのであれば、常識的には自治体は卸売価格で返礼品を調達できる(すべき)はずです。むしろ、営業経費が不要で大量に受発注が可能な分、卸売価格よりもさらに安く調達できるはずです。
例えば、小売価格3000円、原価率を70%(粗利率=30%)とすると、小売り業は2100円でこの品を調達していることになります。もし自治体が小売価格でこの返礼品を調達していたら、1万円の寄付金に対して調達費率は30%になります。
しかし、卸売価格の2100円で調達できれば、調達費比率は21%になります。また、総務省指針通りに調達比率を30%にしても、7000円の寄付に対してこの品を提供することができます。または、1万円の寄付に対して小売価格4280円分(42.6%増し)の量かそれ以上(増量しても小売価格が比例して増えないのならば)の返礼品の提供になります。当該自治体に縁故などがなく返礼品だけを目的とした寄付者がどういう行動をするかは明白です。
2.実質還元率の高い返礼品に注目すべき
では、これはどこを見れば分かるのでしょうか。一番よい方法は、サプライヤーさんのサイトや同封されてくるカタログなどで、小売価格(通販価格)を確認し、ふるさと納税での実質還元率をチェックすることです。通販で5000円するものを自治体が3000円で調達し、1万円の寄付で返礼品としていただけるのであれば、形式的には総務省指針の30%の調達費比率でありながらも、実質還元率は50%といえます。
実際に、返礼品の実質還元率ランキングの様な記事をよく見かけします。しかし、市価の算出方法についてはあまり当てにはなりません(特に肉類)。中には、脂身の多いくず肉を送ってくる自治体もあり、注意が必要です。記事では、くず肉を霜降り肉の価格で換算しているようなものがあります。
以下、私が実質還元率が高いなと思った返礼品、価格面だけでないサプライヤーさんの配慮が感じられた返礼品で、私がリピートオーダーしているものです(全てを紹介できているわけでありません)。今後もこういった返礼品(ハズレも含めて)を紹介していきますので、このブログを通じて、皆さまと情報交換できたらいいなと思っています。
訳あり製品などがふるさと納税の返礼品として提供されていることもあります。「作りすぎてしまったので」「新型コロナ禍の影響で膨らんだ在庫処分のため」「不揃いの原材料を加工したので」などの「ワケ」が想定されますが、こういったものは「訳あり」相当の価格で自治体が調達していればお得感があります。しかし、こうした商品は市場に出せば、それなりに値引きをしているのが常です。風評被害が出ているなどのお気の毒なケースは別として、放漫経営で訳ありになっている業者さんを救済すれば、きりがななく、むしろ放漫経営を助長することになります。また、特定の業者さんに利権が発生し、汚職の温床にもなりかねません。
3.価格以外の評価もチェックするのは当然
私は、ふるさと納税サイトでの口コミ評価と口コミ件数もきちんとチェックするようにしています。基本的にはリピーターが多く、口コミ件数が多ければ安心です。しかし、口コミ件数が少ないと、サクラによりスコアが高いケースもあり注意が必要です。一方で、トラブルにあった自治体やサプライヤーさんを逆恨みし、悪いポイントをつけるような方もいます。これはオンラインショップと同じですね。
また、悪いスコアがつけていても「小分けにしてくれたらよかった」「高齢者なのでもう少しサシが少ない赤身の方がよかった」など家族構成による価値観の違いを反映しているものもあります。こうした点も考慮して口コミ評価を見るには、オンライン通販サイトと同じですね。
返礼品の評価は還元率だけですべきではありません。我が家は3人家族のため便利なサイズ(3の公倍数で小分けしているもの)や、バルクで来ても小分けにしやすい点なども重視しています。皆さまのご家庭の個別事情もあるので、価値観は当然異なるでしょう。その点をご了解いただき、私のふるさと納税の返礼品紹介の記事をお読みいただければ幸甚です。
4.実質還元率が低いケースには注意
ところで、私が危惧しているのは、自治体の実質還元率が30%よりも低いケースです。すなわち、地元業者さんへの補助金として、小売価格よりもむしろ割高な価格で調達しているケースがあるかもしれないということです。
また、宿泊施設など民間観光施設の利用券や、航空券などを提供している場合も注意が必要です。実際に、ホテル・旅館を利用する際に、公示料金で宿泊している方はほとんどいません。航空券も、ノーマル料金で旅行されている方は当日キャンセル・予定変更もあるビジネス客や家族の危篤などの特殊な事情のある方以外は滅多にいないでしょう。普段予約が全くとれないのに、この利用券では優先して予約がとれるなどの便宜がない限り、こうした利用券に券面通りの価値があるとは思えません。●●カードなどを返礼品としているのも、小売価格で自治体が調達していることと同じです。私は金券・利用券の類の返礼品を希望したことはありません。
5.不正の温床になっていないか監視も必要
こうしたケースでは、ふるさと納税を使って、経営が苦境に陥っている地元企業への実質的な補助が行われていることが疑われます。被災地など風評被害のために地元の農産品が売れなくなっている、などの場合は仕方がないとしても、自身の問題により経営が苦境に陥っている企業の救済にふるさと納税の収入を使うことには私は賛成できません。通常、地方財政で特定企業に補助金を出したり、意図的に高く調達することはありえません。
本来、事業をたたむべきゾンビ企業を行き永えさせることに問題を感じるだけでなく、返礼品のサプライヤーに選定されることが巨額の利権を生み、不正の温床にもなりかねません。実際に、職員が金品を受け取ったことで摘発され、ふるさと納税から除外された自治体もあります。こうした点は、地元の議会の方や総務省、警察関係者にきちんと監査・捜査していっていただきたいと思うところです。
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