あちこち旅日記

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クレジットカード利用で手数料をとることが合法な国もあります

  皆様の中には、海外旅行の際にクレジットカードを使用し、サーチャージ(手数料)を上乗せした金額を請求され、驚いた方が多いのではないのでしょうか。
 
 日本では、カード会社と店舗(加盟店)との間で、(1)カード払いを希望する顧客を拒否しない、(2)現金払いの客を含めて他の支払い手段と比べて不利な扱いをしない、旨の契約が結ばれています。このため、クレジットカードやデビットカードを使用してサーチャージを上乗せされることは原則としてありません。例外としては、公金支払いや学校関係の決済がありますが(先月は息子の大学出願料の決済手数料がかなりかさみました)、これは一般の商店と異なりこうした規約が適用されていないためです。また、家電量販店では、現金払いの場合に受けられるポイント加算が、カード払いでは受けられないなどの差別を受けていますが、これはグレーながらも「不利な扱い」とは見なされてはいないようです。



 しかし、オーストラリアではサーチャージを消費者に上乗せすることが公式に認められています。また、タイでもサーチャージを課されたことがあります。一方、アメリカではサーチャージを課すことは禁止されています。また、欧州(EU圏)でもLCCの発券などはカード利用手数料が上乗せされているようです


 クレジットカードを使った場合、イッシュアー(Issuer)と呼ばれるカード発行会社が立て替え払いをします。その際、インターチェンジフィーと呼ばれる手数料を差し引いた後、決済会社を通してアクワイアラー(Acquirer)と呼ばれる加盟店管理会社に支払われます。その後、アクワイアラーは加盟店手数料を差し引いて加盟店に払い込みます。このため、イッシュアー、アクワイアラーが受け取る手数料は、日本では加盟店が負担していることになりますが、こうしたコスト負担がまわりまわって、モノの値段に反映されれば、現金客にも負担になります。


 なお、決済会社(VISAやマスターカードなど)は決済システムを提供しているだけで、イッシュアー、アクワイアラーとはフランチャイズに加盟している三井住友カードやDCカードなどのカード会社に相当します(多くは銀行子会社なので、世界的には通常カード会社=銀行と認識されています)。決済会社はイッシュアーやアクワイアラーから受け取る国際ブランド手数料(ロイヤリティ)が収益源になっています。


 オーストラリアなどでは、加盟店がこうした手数料相当分を上乗せして消費者に請求していますが、必ずしも全ての加盟店が上乗せしているわけではなく、零細な小売店が主に行っているようです。


 実は、こうしたサーチャージ制度は、金融行政当局(中央銀行)主導で始まったものです。オーストラリアではかつて日本と同様にクレジットカードの決済手数料率が高止まりしていました。決済会社の力が強く寡占状態にあるため、競争原理が働かずインターチェンジフィーが高かったためです。当局は、サーチャージを導入すれば、消費者が手数料率の安いカードを選択すると踏んだわけです。


 実際に、サーチャージ制を導入して以降、手数料率は以前と比べて1%ポイント程度低下したそうです。また、クレジットカードと比べて手数料が安いデビットカードを利用する方が増えていった模様です。


 一方、この間に金融機関はATMでの現金引き出しに際して手数料を徴収するようになりました。このATM使用料の方がカードを直接利用した場合の手数料よりも割高なため、消費者はいちいちATMで現金を引き出さずに、デビットカードを使って買い物をするようになってきました。金融機関も、こうした動きを受けてATMの削減に動いています。


 注目すべきは、サーチャージを課したにもかかわらず、消費者は現金使用に回帰せずに、カード利用比率が上がっていったことです。


 日本では、毎月25日や連休明けになるとATMが長蛇の列となり、多くの方が時間を浪費しています。経済産業省によると、現金を使用していることによる社会的コストは年間1.6兆円に上ります。ATMなどの行列を含めれば、日本国民全体の経済損失は年間数兆円に上ると考えられます。日本人は水と空気とサービスと時間がタダと勘違いしている方があまりも多すぎます。キャッシュレス化は、「やった方がよい」問題ではなく、日本が繁栄を取り戻すために、あるいは特殊詐欺や金融犯罪を防止するためにも「やらないといけないこと」なのです。船が沈みかけていて海に飛び込まないといけないのに、「高齢者は泳げないから」などと言っていられ状況ではありません。皆で助けるから頑張って泳いでもらうしか選択肢がないのです。


 オーストラリアの取り組みは、一見すると消費者に負担となりそうに見えかなりの荒療治ですが、割高な手数料故にキャッシュレス化に後ろ向きな商店を後押し、結果的に消費者に恩恵をもたらした一つの興味深い成功事例ではないかと思います。


 もっとも、日本の場合(ポイントの付与など)キャッシュレス取引が現金よりもかなり優遇されているにもかかわらず、現金にこだわる消費者が多いことも事実です。オダギリジョーの出ているCMのように「じゃあいいです」と行動する消費者が少ないことも普及が進まない要因になっています。


 各種調査を見ると、現金派の方には「使いすぎてしまうのが心配」という方が多いようですが、私には理解ができません(日本人はそこまで自制心のない知的レベルの低い方たちなのでしょうか?)。そもそも、残高以上に使えないデビットカードならば使いすぎるということはないはずです。こうした問題は、小中学生のうちからきちんと「借りたお金は返さないといけない」と金融教育をしていけば解決できる問題です(一方で、行列はコストを伴うものであることも認識させることも必要です)。


 もっとも、日本において解決すべきより重要な問題は消費者のサイバーセキュリティ―への国民の信頼感のなさが、デビットカードの普及を妨げていることでしょう。(生体認証技術のさらなる強化など)不正使用を防ぐ技術をもっと強化し、カードの盗難や、ハッキングなどにより損失が生じた時に銀行が原則として全額補償するようにすれば、消費者や預金者にも安心感が広がるのではないでしょうか。


 サーバーセキュリティーへの投資や、盗難への補償措置の拡大は銀行にはコスト負担をもたらしますが、キャッシュレス化とATMの削減によるコスト削減効果が大きければ、こうした負担は容易にカバーできるはずです。


 金利がつかない中、日本の銀行の利益は圧縮され続けていますが、全国銀行の頭取様、ぜひ考えていただきたいものです。残念ながら、日本の金融機関のDX戦略は後進国ともいえるレベルにあるように思えます。やはり、目先のシステムトラブルへの対処に手一杯で、そこまで手が回らないのでしょうか?。


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