トルコは本当に親日国なのか?:日本への関心を呼び戻すためにも復興支援の強化を
トルコでの大地震を契機に、トルコの親日ぶりとその背景についての報道が相次いでいます。特に多いのが、1890年に起きた和歌山沖でのエルトゥールル号遭難であり、1985年のイラン・イラク戦争での日本人の救出です。これらの経緯についての説明は今更不要かと存じますが、これを根拠にトルコを特別な親日国であるとの報道があふれています。
しかし、各種調査を見る限りこういった記事は説得力を欠きます。下記の電通の調査でも、トルコでの親日度は高いのですが、20か国のうち中位にあり、とりたててトルコが上位にあるわけではありません。
私もトルコ関係のビジネスをしたことがあります。確かに、親日か反日かといわれると、反日という方はほとんどいません。エルトゥールル号遭難事件だけでなく、ロシアからの脅威にさらされてきたトルコにとって日露戦争で日本が勝利したことをわが事のように喜び、祝福した、などの声をトルコの歴史に詳しい日本人から聞いたこともあります。
しかし、実際にトルコに行くと、日本への関心の低さを感じます。実際にトルコを訪問する観光客は、近隣のロシアや中東を除くと大半が欧州からです。トルコはNATO(北大西洋条約)加盟国であり、EU(欧州連合)にも加盟を申請しています。歴史的に英仏などが中東紛争に手を染めてきたことや、宗教問題、地中海ガス田の開発、リビア内戦などをめぐり欧州諸国との摩擦は絶えませんが、トルコ人の欧州への関心の高さは日本の比でありません。
最近では中国や韓国のプレゼンスも高まっています。最近では橋や鉄道などの主要インフラ施設を中国・韓国の企業が相次いで落札しています。「日本企業は消極的だ」、「日本は口だけで何も行動しない」との不満を政府関係者からもよく聞いていました。日本の建設会社は工事を受注して儲けるだけで、リスクを伴うプロジェクトへの出資に後ろ向きだというイメージが強いようです。本来は外貨不足に悩む発展途上国の資金調達の支援のためのODA(海外開発援助)ですが、現在の日本のトルコへのODAはリスク資産に投資し収益で資本を回収する方式ではなく、公益性が高い環境対策などへのリスクをとらない貸し付けに主眼が置かれていることも影響しているのかもしれません。現実のトルコ人はもっとビジネスライクでドライです。
観光ガイドを見ると、「トルコでは観光地などで話しかけてくる現地人には要注意、彼らはエルトゥールル号遭難事件を挙げて親日ぶりをアピールして近づく」との記述が結構あります。大変残念なことですが、トルコ人にとってエルトゥールル号遭難事件は、日本人をカモにする材料になりつつあります(ぼったくりのお土産物屋さんへの呼び込みや、女性のナンパにの常套句だそうです)。
しかし、多くのトルコ人はビジネスライクでドライありながらも、純粋な方たちです。また、トルコ地震への支援活動が必要なこととは別物です。同じ地震国である日本だからこそできること、すべきことはたくさんあります。トルコ人からエルトゥールル号遭難事件が風化しつつあるとしたら、トルコへの支援はその記憶を呼び覚ますためにも強化すべきといえるでしょう。
トルコはイスラム教の大国(G20加盟国)であり、地政学的にも非常に重要な国です。復興に向けて多くの投資案件が出てくることもありますが、トルコとの経済関係を強化することが日本の国益にとっても重要であることはいうまでもありません。
ご参考までに、前回トルコへ行った時の印象をまとめてあります。今回の世界一周旅行では見送りましたが、現地の混乱が収まったらまた行ってみたい国の一つです。
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