マクドナルドから分かる日本の凋落:モロッコでもキオスクがありました
先日、久しぶりに日本のマクドナルドに行きました。昨年末に世界一周旅行をした際は、海外のファーストフード店に寄る機会がありましたが、日本の店舗は久しぶりでした。しかし、その際強い違和感を覚えました。今回はそれを報告します。
まず、寄ったのは池袋の駅からほど近いLABIの裏手にある店舗です。入店したのは土曜日の午後3時すぎだったので、すいているかなと思いましたが、レジには行列が出来ていました。海外のマクドナルドの店舗では、このようなレジの列はあまり見たことがありません。さすが日本有数の繁華街の店だなと最初は思いましたが、しばらくすると別の違和感が・・。そう、海外の店舗でよく見かけるセルフオーダー端末(キオスク)がありません。
既にアメリカでは大半の店舗でセルフオーダー端末(キオスク)が導入されており、今回行ったモロッコのカサブランカでも導入されていました。また、ここ数年行った海外のマクドナルドの店舗(ソウル、エルサレムなど)も全てキオスクが導入されていました。
キオスク導入の効果については、もう多くの実証研究が尽くされているようです。行列が短くなり、店舗の売り上げ拡大につながったことが明らかになっています。
しかし、そういえば日本では導入している店舗を今まで見たことがありませんでした。そこで気になって調べたところ、すぐ近くにあるサンシャイン・アルタの店舗で導入されていることがわかり、すぐさま移動して見比べてきました。
アルタ店ではキオスクが3台導入されていました。しかし、ここでも違和感が。入店した時には3台とも誰も利用しておらず、写真を撮る段になってようやく2台が使われました。
一方で、一つだけあるレジにはLABIの裏手にある店舗よりもむしろ長い列ができていました。
キオスク導入による効果は、ほかにも数多く挙げられます。①オーダーの間違いがなくなる、②複数の外国語対応が可能、③対面でのやり取りがなく衛生的である、などのメリットもあります。外国人観光客の増加や、新型コロナ感染の拡大といったここ数年の環境変化を考えると、日本でもキオスク導入が急速に進んでいてもよかったはずです。
キオスク導入に伴う費用(リース料やメンテナンス費用など)は当然かかります。正確なところはわかりませんが、せいぜい1台当たり月間数万円程度とみられます。最大1日24時間休まず働いてくれることを考慮すれば(故障しなければの前提ですが)、アルバイト店員の最低賃金よりもはるかに安い費用で導入できることになります。実際に、日本よりも人件費水準の安い国で導入されていることを鑑みると、導入コストが障害になっているとも思えません。
では、なぜキオスク導入が進まないのでしょうか。そもそも導入しても利用する客が少なければ、会社側も導入するインセンティブに欠くことは当然です。
アルタ店を見てわかったことですが、キオスク導入の遅れは、日本のキャッシュレス化の遅れと表裏一体ではないかと思えます。キオスクはキャッシュレス決済が原則であるため、キャッシュレス対応が遅れている日本では海外で普及しているものと同じ機種が導入できないという問題が考えられます。また、日本で広く行われている紙の割引きクーポンに対応できないなどの問題も考えられます。もっとも、モロッコでは、キオスクでオーダー後、窓口で現金と引き換えに商品を渡す方式もとられていました。運用次第で何とかなるのではと思われます。
また、モバイルオーダーの導入に注力してきた手前、二重投資を避けたかったということも考えられます。しかし、海外ではモバイルオーダーとキオスクを同時導入している店舗は珍しくありません。
第三には対面サービスこそ最大の「おもてなし」と考える日本の文化が影響している可能性です。もっとも、ファーストフードに「おもてなし」を求める方、行列に並んでも対面販売を求める方がどれだけいるのか疑問です。
最後に、高齢者やデジタル化についていけない人への対応も理由かもしれません。でも、高齢者はそもそもあまりマクドナルドの店舗にはあまり行きません。
いずれにしても、日本のマクドナルドの店舗が技術革新から大きく取り残され、非効率な営業を行っていることに変わりありません。売上や利益の機会損失が多額に上っていることは疑いの余地はありません。
日本では消費者が行列により浪費する時間のコスト意識にきわめて鈍感なことも深刻です。年収1000万円の人ならば、年間労働時間2000時間(250×8時間)で割ると、時給は約5000円になります。12分間行列していると、1000円の無報酬の労働をしているのと同じことであり、450円のビックマックを1450円払って買っていることになります。賃上げだとか減税だとかいう前に、国民の意識を変えていかないと日本人の生活水準はいつまでも向上しません。人手不足が成長の制約になってきている中で、行列による経済損失を減らすことは、賃上げよりもはるかに効果的で、弊害のない所得向上政策ではないでしょうか。
2025年の大阪万博では、数多くの外国人が来日し、日本の最先端の技術に注目が集まるでしょう。しかし、このままでは、現状の日本の決済システムを見た外国人が失望するシーンが容易に推察されてしまいます。
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