あちこち旅日記

乗り物好きの旅行日記。コスパのよい贅沢な旅がモットー。飛行機、鉄道の搭乗乗車体験記やグルメ情報をご紹介します。

コピー商品論:許せないものと許せるものの線引きはどこか?

 海外に行く機会が多いと、結構な機会で偽ブランドの「コピー商品」を目にします。もちろん違法行為は許してはいけないのですが、中には明らかに偽物であることがわかるようにしているものもあり、「この程度は反則すれすれ」と思えるようなものもあります。「どこまでは許せて、どこからは許せないか」今回の日曜評論ではこの線引きを考えてみたいと思います。


 なお、私は法律の専門家ではありません。違法行為か否かは私の「常識的センス」で判断しています。皆さまのご意見お待ちしています。


1.絶対に許してはいけないもの(1):偽ブランド品を本物と偽って販売


 偽ブランド品を本物と区別のつかないように精巧に作り上げ、本物として販売する。これは、知財権保有者、消費者ともに損害を与える疑いのない違法行為でしょう。


 偽ブランド品は、かつての香港でもよく目にすることがありました。私が駐在員をしていた1990年代初頭は、日本人をターゲットとした高級時計の偽物商がとても多く、尖沙咀の繁華街を歩いていると、よく日本語で声をかけられました。彼らの特色は、日本人の体形・年齢により「センセイ」「シャチョー」と使い分け声をかけてくることです(私も赴任当初は「センセイ」と言われていましたが、中華料理の食べすぎでだんだん恰幅よくなり「シャチョー」に変り、最後には香港人と思われ日本語で声をかけられなくなり、広東語で話しかけられたりするようになりました)。


 一度話のタネにもと思い、キャッチについったことがありますが、雑居ビルの奥の小部屋に連れていかれ、ドアを占めるように言われ、スイス製の高級時計の偽物を次々出してきました(もちろん買いませんでしたが)。


 彼らは「ニセモノ」「インチキ」などと怪しげな日本語で言いながら販売していたので、まだ良心的かもしれません。ヤフーオークションで一度妻が「プラダ」のバッグを落札したことがありました。宅配便で到着したので、見たところ、作りは立派ですが、何か違和感が。よく見るとタグが明らかに本物と違っていました。一切返品は認めないとのことでしたが、業者に連絡し「返金してくれれば訴えない」と言ったところ、素直に返金してくれました(この時点で偽物であることを認めたようなものです)。数日後にはその業者のホームページは閉鎖されていましたが、ヤフーオークションの評価ではたくさんの好評価がついていました(知らずにだまされている方が多かったということでしょうか)。


2.絶対に許してはいけないもの(2):国家ぐるみでの知財権の侵害を合法化


 偽ブランド品については、各国政府も躍起になって摘発に動いており協力的ですが、国家主権や司法権を盾に、我々日本人の常識に反する法解釈で、企業の利益を侵害する行為もあります。
 いい例が、中国におけるウルトラマンの商標権をめぐる係争です(詳しくは下記の記事ご参照)。



 また、中国でよくあるトラブルが、日本企業の商標権が先願登録され、日本企業が逆に訴えられたりしていることです(出願していなかったなど、日本企業の甘い対応にも問題ないとは言えませんが・・・)



 中国で一番被害を受けているのは「松下」ブランドでしょう。パナソニックに社名変更した松下電器ですが、中国国内での松下ブランドの力は強く、漢字での登記が必要なこともあり、現地法人名に「松下」の名前は残っています。しかし、松下の名前を冠した無関係の現地企業があり、Panasonicを1文字変えただけの商品も売られています。誤認し購入している現地消費者が少なくないようです。同社は、鄧小平が是非中国に進出してほしいと頼んできたことで知られています。請われて進出したのに、こうした仕打ちは許せません。


 香港でも、かつて香港で松下やPanasonicの偽ブランド商品が問題になったことがあったそうです。その際、中国政府は「一国二制度」という都合のよい言い訳をして取り合わなかったと聞いたことがあります。 


 家電分野では、SONYならぬSQNYなど姑息な社名・商標も登記されています(笑わせてくれますが)。もっとも、SQNYは結構技術力もつけており、Amazonや楽天でも取り扱われているようです。


3.ぎりぎり合法かもしれないけど、誤認される可能性は大きそう


 SQNYのケースではよく見ると本物との違いはわかりますが、視力が悪い方だと間違えてしまえそうで、誤認されて購入される方も少なくないようです。外食サービスも同様です。この写真は、桂林で見かけたKFCならぬKFDの店舗です。カーネルおじさんの絵が随分若く、チキンでなくダックなので本物と区別がつきますが、これいいの?という思いです。


 
 このほか、上島珈琲という喫茶店が中国各地で展開していますが、これも日本の本家と無関係で、台湾人が創業したもののようです。UCCではくUBCを名乗っているので、よく見れば見分けがつきますが・・・。中国で多店舗展開が進んでいるので、日本に旅行に来た中国人にむしろUCCがUBCの偽モノと思われても不思議ではありません。


 しかも、メニューを日本語併記にするなど、明らかに日系を装っていることは明白。興味があったので、中国人の部下に電話で会社の沿革を聞いてもらおうとしたことがありましたが、「日本からの電話」と伝えた瞬間ガチャ切りされたそうです。もはや確信犯としか言いようがありません。



4.これくらいは許してあげてもいいかもしれないけど・・・


 一方で、明らかな違法行為をしているわけではないので、このくらいなら許してあげてよい(文句は言えない)というのもあります。ただ、多くの外国人が日本製と誤解する可能性があります。せめてメイドイン・ジャパンの品位を低下させないように、品質向上には精進していただいたいものです。


①メイソウ(名創優品)
 最近では、かなり知名度が上がってきましたが、いわゆる「なんちゃって日本ブランド」です。ユニクロ+ダイソー+無印良品を3で割ったようなコンセプトとロゴで世界中に店舗を拡大しています。実態は中国企業ですが、日本人デザイナーを設立時の社長に立て、日本に実店舗を東京・銀座に置く(実質的な本社は広州らしい)などの取り組みをしており、創業当初に滅茶苦茶と批判された日本語の表示も改善されるなどの努力も怠っていません(下記ポスターもまだ日本語表現が微妙におかしく、校正が足りないという感じがしますが・・・)。
 ついには2020年に持株会社(ケイマン籍)がNY株式市場に上場するなど、国際社会でも認知度を高めています。進出した国の一部では、日本企業だと思われているようですが、これまでの経緯から完全には否定することができないのが現実です。せめて、日本のイメージを壊さないように誠実なビジネスを展開してほしいです。

 

 
 ちなみに、マレーシアにも「ユビソウ」という酷似した「なんちゃって日本」ブランドが存在します。事情通の方によると、こちらの方が「なんちゃって度」が強いようです。



②Oishi(タイ)
 こちらもれっきとしたタイの上場企業です。もともとは、日本式のしゃぶしゃぶや寿司のビュッフェから出発し、その後緑茶飲料をヒットさせ、急成長した企業です。緑茶には砂糖入りもあり、日本人の口には合いませんが、現地ではこのセグメントでトップメーカーになっています。どこにも迷惑をかけているわけではないので、悪質度ゼロです。タイにはマッサージ店の「有馬温泉」などオーナーが日本好きでこうしたネーミングをしているところもあります。「日本好きで」と言われると悪くは言えなくなってしまいますね・・・。



 なみに、Oishiという名前のスナック菓子をアジア各地で見かけますが、これは同社とは無関係のフィリピン企業によるものです。品ぞろえは「かっぱえびせん」のような日本でポピュラーな製品のパクリ商品ですが、これも明らかに現地製とわかるので、日本企業の被害度は少なそうです(「かっぱえびせん」類似商品は韓国でも地元企業が結構売っております)。


③優の良品(香港)


 こちらも、無印良品のパクリのような名称ですが、香港で100店以上、海外を含めると150店以上出店していた菓子小売チェーンです。日本企業との関係はなく、日本製品はあまり扱っておらずプライベートブランド主体の店です。ただし、商品名は日本の有名ブランドのパクリ的なものが多く、ここがひっかかります。
 ちなみに、「雪の恋人ミックスクッキー」というのがあります。以前、「白い恋人」の石屋製菓がよしもとの「面白い恋人」を訴えた件がありました。これと比べると悪質度は高いとはいえず、誤認されるケースが少ないのか、石屋製菓が何か行動を起こしたとかは報じられていません。
 なお、同社は新型コロナの感染拡大で2022年6月5日をもって香港の全店舗を閉店したと報じられています。



 一方、香港を中心にOkashi Landという名前の菓子の小売チェーンがあります。こちらは香港資本の企業ですが、本物の日本製品を輸入し売っている店のようです。二セ日本ブランドの最大の被害者はこうした誠実な現地企業かもしれません。



④ジャカルタの「一喰堂」
 世界一周記でも報告した、ジャカルタのプラザ・インドネシアに入っているラーメン店。日本の有名店で修業をしたインドネシア人が独立して開業したもので、ジャカルタで多店舗展開に成功しています。日本人の口には合うものではありませんが、現地の方や外国人には受け入れられているようです。


5.ここまで来たら座布団一枚レベル
Brosister
 「なんちゃって日本」には大喜利のような面白いネーミングも転がっています。極めつけがこれ。商品ラインは、ブラザーのパクリでミシンやコピー機に及んでいます。Amazonなどにも出品しており、品質面では一定の評価を得ているようです。それにしても、なぜSisterとしなかったのでしょうか。


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