あちこち旅日記

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イスラエル訪問記(下):エルサレムに来てわかったイスラエル発展の裏側

 今回は2019年イスラエル訪問記の3回目(最終回)です。これは昨年9月27日に投稿したものを加筆修正したものです。 
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 前回はイスラエル最大の商業都市であるテルアビブの様子を紹介しました。スタートアップ大国と呼ばれるようになったイスラエル経済の中心地であるテルアビブでしたが、意外に社会システムは遅れており、表面からはなぜイスラエルがすごいのかよくわかりませんでした。しかし、バスで1時間半くらいで行けるエルサレムに行ったことでその裏事情がわかってきました。


 テルアビブがビジネスの中心ならば、エルサレム新市街は政治の中心。クネセト(議会)や主要政府機関、中央銀行はエルサレム新市街に固まっています。写真は財務省です(本当は政府機関は撮影禁止だそうですが、蔦に覆われた建物が素晴らしいので撮ってしまいました)。



 テルアビブからの高速バスは、新市街にあるターミナルに着きます。テルアビブが丸の内~大手町ならば、ここは有楽町か新橋という雰囲気。雑然とした中にも活気を感じます。街で目立つのが、休暇中の若い兵士の姿です。イスラエルでは、高校卒業後2年程度の兵役があります。男女とも兵役義務がありますが、男性の方が期間は少し長いようです。イスラエルの兵士たちは、休暇中でも非常時に備えて自動小銃を携帯し、軍服を着ていないといけないそうです。テルアビブではほとんど見かけなかった兵士たちが、エルサレムのバスターミナルには大勢いました。おそらく、ここから故郷に帰宅するのではと思われます。


 写真を撮ることができませんでしたが、若い女性兵士が自動小銃持っている様には圧倒されます。もっとも、「峰不二子がたくさんいる・・・」と期待してはいけません。皆化粧っ気なく、そこまでセクシーではありません。


 実は、イスラエル経済の強さの秘訣の一つは、この兵役にあるのかもしれません。兵役に就く若者のうち、優秀な者は諜報機関や、化学兵器の研究部門などに配属され、サイバーセキュリティや化学兵器の研究(化学兵器の製造は国際法違反なので、解毒剤などの研究をしているのでしょう)に携わります。その後、退役時に大学に入学して学ぶことになります。軍での仕事で実務経験を積んでいるため、問題意識を持って学ぶことができ、卒業後には多くの者が起業します。軍も退役後の進路に制限を設けておらず、大学も知財権の提供に協力的です。


 もし、日本で自衛隊との共同研究などと言ったら、学術会議の人たちや左派系の人たちが大騒ぎして、政権が倒れる騒動になってしまうでしょう。また、防衛大の卒業生が民間企業に就職することすら大変だと聞いたことがあります(別室に呼ばれて教官から厳しい叱責があるとの都市伝説があるようです)。実際に防衛技術の民生移管により生まれたサービスは数多くあります。もっと柔軟に考えられないのでしょうか。


 エルサレムでもう一つの驚きは、ハレディム(超正統派)と言われるユダヤ教徒の多さです。彼らは旧市街に行くと多くみられます。旧市街は、世界有数の観光地でもあります。こんな感じで雰囲気の良い街並みが続きます。


 
 旧市街の中には袋小路があり、奥に進んでいくと有名な「嘆きの壁」につきます。


 
 ここでは男女のお祈り区画が分かれており、男性はキッパという小さい布を頭にかぶり、頭頂部を隠さないといけません。これは観光客にも無料で貸していただけます。


 
 嘆きの壁では、上下黒いスーツを着てひげを生やして、旧約聖書を読んでいる男性を大勢見ることができますが、彼らがハレディムです。


 
 基本的に彼らは就労しておらず、ここで旧約聖書を読むのが日課になっています。当然税金を納めておらず、兵役も免除されています。合計特殊出生率が6.0とびっくりするくらい高いため(避妊を禁止する教義が影響しているとみられています)、人口も急増しており、人口構成比が2割近くになってきています。このため、年々社会保障費が肥大化し、財政を圧迫しています。イスラエル国会では宗教政党の力が強く、前の政権まで連立与党だったことから、彼らは様々な特権を有していました。兵役免除廃止の法案が国会で可決されたものの、今まで実現していません。政権が交代したことで、彼らに兵役の代わりに社会奉仕活動を課すなどの案が出されています。
(注、2022年の選挙で政権交代があり、現在では超正統派の宗教政党と極右政党がネタニヤフ首相率いる中道右派のリクードと組む連立政権に戻っています)


 エルサレムではテルアビブよりもアラブ系の方々をよく見かけます。イスラエルの総人口のうちアラブ系住民も2割程度占めています。アラビア語もかつては公用語だったことから、ヘブライ語、英語と並びアラビア語も併記されることが一般的です。イスラエルの市民権を保持し、イスラエル人として教育を受け、ヘブライ語を話している人たちですが、世俗派のユダヤ教徒を比べると低所得者が多いようです(それでもハレディムと比べるとましなようです)。


 ハレディムは男性が、アラブ系では女性が働かず、一家の生計はハレディムは女性が、アラブ系では男性にかかっています。知人のイスラエル人(政府機関の結構エライ方)は、「アラブ系の男がハレディムの嫁さんをもらえばダブルインカムでリッチになるけど・・・そうもいかないからね」とジョークを言っていました。


 イスラエルでは、ロシアや東欧系の名前の方も多いですが、彼らはソ連崩壊後に移民してきたロシア・東欧系住民とその子孫です。教育熱心な彼らの科学技術力もイスラエルの発展に貢献してきました。しかし、こうした世俗派ユダヤ人は低出生率に直面しています。イスラエルの今後の発展には、アラブ系やハレディムをどう労働力に取り込んで行くかがポイントとなっています。こうした中、ロシアのウクライナ侵攻に不満を持つロシア人が再び国を離れる兆しを見せています。移民第二波が起きるか注目です。


 イスラエルは、4度にわたるパレスチナ戦争を経て、パレスチナを支持するアラブ諸国と敵対関係にありました。これまで国交を有する国は、ヨルダンとエジプトだけでしたが、2020年以降、UAE、バーレーン、スーダン、モロッコと相次いで国交を正常化しています。このため、オイルマネーがイスラエルに流入し、通貨高が進み、旅行者物価はかなり高くなってしまったのは残念なことです。

 写真のマクドナルドのセットメニューが60シェケルでしたが、1シェケルは当時の30円が今では40円を超えています。


 
 また、地元のコーシャー(ユダヤ教で認められた料理)のファーストフード店のランチセットは66シェケルでした。


 
 イスラエルはまた、親日な方が多い国でもあります。ナチスからの迫害されたユダヤ人の通過ビザを発給した元リトアニア領事代理の故杉原千畝氏の話は有名ですが、多くのイスラエル人には過去の伝説になっているようです。むしろイスラエル人が尊敬する日本人は本田宗一郎や盛田昭夫といった起業家たちの方ではないかと思います。彼らは、今日の日本の繁栄を築いた起業家たちを尊敬しており、起業家精神こそが彼らの発展の原動力になっています。

 その意味で彼らは今の日本を憂いています。あるイスラエル人に今回の訪問中に言われた「あのクリエイティブな尊敬すべき日本人はどこに消えてしまったの?」の一言が今でも耳に残っています。


 この時は3泊4日の駆け足訪問でしたが、イスラエルで起こっていることの重要さを感じることができました。また来たいという思いを胸に、ベングリオン空港を後にし、香港に向かいました。

 空港には出発4時間前到着を勧められましたが、厳しいと言われる検査は普通の空港と変わりなく、3時間前にならないと航空会社のカウンターも開きませんでした。空港は海外旅行に向かうイスラエル人と、聖地を訪問する外国人で結構混雑していました。


 
 香港へは往路と同じ、キャセイ航空を利用しました。そして、帰路寄った香港が当時は雨傘革命でとんでもないことになっていました。



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 ところで前々回の投稿で、イスラエルの国営航空会社エルアル航空では、下着まで脱がされる都市伝説があることを紹介しました。


 どうもこれは伝説でなく、空港の「エルアル部屋」で本当に「パンツ一丁」で検査させられるようです。ハマスによるテロが起きる少し前に同航空を利用してテルアビブに行ったユーチューバーのSUさんが体験した動画がありましたので、共有させていただきます。運航が再開されても、外国航空会社を利用した方が無難のようです(入国自体はさらに簡単になっていたようです)。



【壮絶】世界で一番厳しい?日本から唯一のイスラエル直行便のエルアル航空に乗るとこうなります。


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