あちこち旅日記

乗り物好きの旅行日記。コスパのよい贅沢な旅がモットー。飛行機、鉄道の搭乗乗車体験記やグルメ情報をご紹介します。

円安でもすぐには下がらない訪日旅行客のコスト

 世界一周旅行に出ていると、いろいろ思うところが出てきます。週に一度くらい、思ったことを発していくことをどうぞお許しください(また明日より世界一周旅行記再開します)。


 まず、今日の一枚です。これは、プラザ・インドネシアのモールに入っていた旅行代理店のポスターです(下の方に内側から書いたとみられる文字があり見えくくなっており、申し訳ございません)。

 日本ツアーを見ると期間がやや長い欧州やスイスのツアーと比べても料金はさほど変わらず、期間が1日短い韓国ツアーと比べると1日当たりの金額はかなり割高です。テーマパークの入場料込みであることを考慮しても、割高感は否めません。長期にわたるデフレと円安により、日本での滞在コストや旅行者物価の割高感は消えているのに理不尽な感がします。これはいったいどういうことなのでしょうか。


 まず、データで事実を確認しておきたいと思います。国際通貨研究所という調査機関が日本の購買力平価レートを計算していますが、2022年8月の消費者物価基準の日本の購買力平価レートは1ドル=108.71円となっており、実際の為替レート(8月平均で1ドル=135.28円、現在は1ドル=144円台)の方が大幅な円安になっています。これは、日本の物価水準が、物価の安い周辺のアジア諸国を含めた貿易相手国を含めても相対的に大幅に安くなったことを意味しています。ましてや物価の高い先進国との比較では日本の物価が激安になっていることは明らかです。訪日外国人客が増えれば、今までと比べ物にならない規模での爆買いが起こっても不思議ではありません。


購買力平価レートとは、内外の物価が等しくなる為替レートの水準をいいます。消費者物価基準の日本の購買力平価レートというのは、日本の貿易相手国の消費者物価水準を加重平均すると日本と同じになる為替レートの水準ということになります。プラザ合意後のドル円レートの水準をみると、かつては輸出物価指数を基準とした購買力平価レートとの連動制が強くみられました。競争力のある日本の輸出産業が円を強くし、日本の購買力を高めた一方で、旅行者にとって日本での滞在費は割高になっていました。


 ここは、専門的な経済学の領域になってきますので、さらにご興味のある方は同研究所のホームページをご覧ください。 



 
 為替レートのグラフは以下のリンク参照。
https://www.iima.or.jp/files/items/3098/File/doll_yen.pdf


 しかし、せっかく円安が進み、海外からの旅行者の購買力が増しているのに、来日費用が高くつくのであれば、彼らの購買力も削がれてしまい、爆買いのパワーも低下してしまいます。また、「日本は物価が高い」という誤った外国人の先入観も払拭されないでしょう。


 では、なぜ急速な円安にもかかわらず、外国人観光客の来日費用が下落しないのでしょうか。考えられる要因としては次の2つがあります。


①制度上の理由ですぐには下がらない航空運賃
 航空運賃は出発国の通貨建てで決められています。このため、円安が進むと海外での発券コストが割高になってしまいます。いずれは日本からの円建て出発運賃が値上げされ、海外からの出発運賃が現地通貨建てで値下がりすることになると予想されますが、実際の価格改定が行われるまでにはかなりの時間を要します。むしろ短期的にはサーチャージの高騰で現地発の運賃も上昇すると予想されます。


②日本の入国規制で特定業種に超過利潤が発生
 新型コロナ感染の拡大で、日本政府はこれまで1日当たりの入国者数を制限するとともに、訪日外国人の観光を団体観光に限ってきました。このため、団体航空券の供給が少なくなったことで航空運賃が高騰し、航空会社や取り扱い実績のある旅行会社などに超過利潤が発生していると考えられます。


 ①は時間が解決する問題であり、②にしても、個人観光が解禁され、入国者数の制限が撤廃されることで、今後競争原理が働き、訪日コストが下落してくると期待されます。とはいえ、入国者数制限をするよりも、外国人観光客に多額な入国税を課していれば、自ずと入国者は制限され、しかも財政面でもプラスになっていたはずです。日本の出入国税や自治体が課している観光税は諸外国と比べても激安です。


 確かに、入国者制限により航空運賃や団体ツアー料金が高止まりし、苦境に陥った航空会社や観光関連業者が助かっている面もあるかもしれません(Go To キャンペーンでも、補助金前のパックツアーの料金は値上がりしています)。しかし、日本の航空会社や観光関連業者を助けるのは理解できますが、外国の会社まで助ける必要があるのか疑問があります。課税によって得られた税収を使い、苦境に陥っていた国内の業者を助けることができたのではないでしょうか。また、観光インフラの整備や行政サービスにもお金がかかります。これを国民や住民に課すのか、受益者である観光客に負担いただくかの議論があってもよいのではと思います。


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