あちこち旅日記

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ガザ紛争の真相を探る:誰がハマスに資金を提供しているのか

 これまでガザ紛争の背景を中東の歴史を回顧しつつ説明してきました。①アラブ産油国は脱石油依存のためにイスラエルとの国交正常化を進めており、パレスチナはもはややっかいな存在になりつつある、②アラブ諸国の心配はムスリム同胞団の影響を受けた過激派組織であり、立場上イスラエルを批判するが、ハマスを支援する気は全くない、④イスラエルと対立しているのはアラブでないイラン(ペルシャ)と傀儡勢力だが、イランがイスラエルを攻撃する理由に欠ける、⑤ハマスのイスラエル奇襲はサウジのイスラエルとの国交正常化への牽制とする見方が多いが、むしろ対米・対イスラエルの関係改善を模索するイランへの牽制では、ということを述べてきました。


 では、ガザ紛争の黒幕はイランでなければ誰なのでしょうか。


 それを考える手がかりは、誰がハマスに資金を提供しているのか、ということではないでしょうか。そもそもイランの傀儡勢力が所在している国は、いずれも経済破綻しており、独自に戦費の調達をすることが困難です。また、イラン自信も原油の輸出を禁止され、ドルを使った貿易決済も大きな制約を受けています。イランがこうした傀儡勢力に資金的な援助を行うことも困難です。


 めぼしい産業のないガザは、外国からの資金援助に頼った経済構造になっています。こうした中、ガザ政府の資金はオスロ合意の取り決めにより、イスラエルが徴税し、パレスチナ自治政府(PA)を経由してガザに配布され、公務員の給与などの支払いに充てられています。しかし、ハマスのイスラエル攻撃などの破壊行為を受け、数年前からこうしたイスラエルからの送金は大きく制限を受けており、PAもガザへの送金を絞っている状況にあります。


 また、カタールやエジプトなどの一部のアラブ諸国からは原油や建設資材などの現物が提供され、ガザ政府はそれを外国に売って財源に充てることもしています。しかし、それも先細りを見せています。


 このため、ガザ政府は公務員の給与の支払いに困窮しており、生活物資もNGOや国際機関による支援に依存している状況にありました。こうした状況下では、ハマスは武器の調達などの資金に困窮していると考えるのが自然です。


 では、ハマスはどうやって戦闘資金を得ていたのでしょうか。マネーロンダリング(資金洗浄)を経た不正な方法での資金提供が行われていた可能性など、不正な形で資金を得ていたとみられます。



 第一に考えられるのが、国際連合パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)などの国際援助機関の資金が横領されていた可能性です。UNRWAについては、本部地下でハマスの主要なトンネルを発見したとイスラエル軍が動画を開示して主張しています。この真偽についてはまだ証明されていませんが、UNRWAの発言は歯切れが悪く疑念は晴れません(日本を含めて数か国は現在UNRWAへの拠出を停止中です)。国連機関といっても大勢のローカルスタッフが採用されており、ハマスにつながる者がいても不思議ではありません。UNRWAの資金が横領されたり、援助物資が横流しされていた可能性もあるとみられます。



 第二に考えられるのは、資金力の豊富な外国勢力が提供している可能性です。近隣のアラブ産油国の可能性もありますが、以前にも報告した通り、カタールを除くアラブ産油国の多くはもはやハマスをやっかいもの扱いしているというのが現状です。また、カタールも現状ではガザへの資金提供はPAを通じた公式ルートで行っています(それを隠れ蓑にして、不正なルートで資金を供与している可能性は否定できませんが・・・)。


 もっとも、仮にガザに送金できたとしても国境検問所を越えた物資の搬入や、海上からもアクセス手段も制限されています。ハマスがどうやって戦略物資を手に入れているのか、疑問は尽きません。
 
 資金の提供だけでなく、ガザを封鎖しているイスラエルの監視の目を盗み物資の搬入をするためにはかなりの諜報能力を有しないと難しいでしょう。また、国連機関における不正をあえて見逃すことができるのは、それなりの影響力を持った国でないと難しいでしょう。そう考えると、ある程度の絞り込みはできてきます。


 続きは2月25日の投稿を予定しています。


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