あちこち旅日記

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中国による日本への団体観光解禁について考える

 8月10日付で中国政府が日本への団体観光の解禁を発表しました。ゼロコロナ政策が昨年末に見直されて以降、中国人の団体観光は次々に解禁されてきましたが、日本、米国、韓国などに対しては停止されたままでした。今回は、日米韓ともに同時解禁になっています。日中韓への団体観光の禁止措置には明らかに政治的な背景があると見られていたことから、中国国内の旅行業者の救済だけでなく、関係改善に向けた中国側のサインとみることもできますが、本当に喜んでよいのでしょうか。今回は、様々な角度からこの問題を検討してみたいと思います。



「オーバーツーリズムがさらにひどくなる」は誤解
 ただでさえ、オーバーツーリズムが問題となっている中で、中国人団体客がくれば事態がより悪くなると指摘がありますが、これは正しくありません。なぜならば、宿泊施設の供給量に制約がある以上、中国人団体客が増えた分、国内客やその他外国人客が減少することになるためです。
 中国人観光客のマナーの悪さを指摘する方もいますが、中国人だけではなくK国人や欧米人にもマナーの悪い人はいます。少なくとも、添乗員による統率のとれている中国人団体客の方が、わがままな中国人個人客よりはましなような気がします。
 一方、宿泊料金の値上がりは避けられません。ビジネス出張に支障が出る事態となれば、経済活動にも大きな影響が出かねません。経済活動への支障を回避すべく、全国旅行支援はこの際に廃止することが望ましいと思います。
 こうした状況は、同時に中国人の団体観光が解禁される隣国韓国でも起こってくると想定されます。韓国での宿泊料も急騰することになるのは必至で、韓国旅行を予定されている方には迷惑な話になりそうです。


異次元爆買いが起きてもおかしくないが・・・
 上記記事にあるように、多くの方は爆買い復活などの経済効果を期待しているようです。さらに、円安効果も大きく期待できます。日本円の実質実効為替レートは、コロナ禍前のインバウンド観光のピークだった時期よりも大幅に下落しており、1ドル=360円の固定相場制だった1970年時点の水準まで下落しています(名目レートは1ドル=140円台ですが、諸外国と比べて日本のインフレ率が低かったため、日本の物価は外国人から見て大幅に割安になっています)。為替レートだけみると、爆買い復活どころか、以前と比べものにならない「異次元爆買い」が起きてもおかしくありません。


中国人の日本製品離れが起きてないかの試金石
 一方で、これまで中国人観光客に人気のあった家電製品(炊飯器など)や化粧品、食品などを引き続き買ってくれるかが重要です。家電製品は中国メーカーの技術力が高まっており、化粧品は常に欧米メーカーとの競争にさらされています。また、食品は原発処理水問題が食品の販売にどれだけ影響しているのかも気になります。


日中間の航空路線の座席供給数増加は日本人にもメリット
 中国が対日団体観光を禁止してきたことで、中国の航空会社による日本路線の運休が相次いでいました。このため、座席供給が少なくなり、日本からの中国訪問者数も大きく落ち込んだままになっています。日本人への観光・ビジネスビザ免除措置の停止や、日本人ビジネスマンが逮捕されるなどの事件も影響していたことも主因ですが、日中路線が再開されれば日本企業には朗報になると期待されます。
 また、中国から直接便が乗り入れている地方にとっては、さらに経済活性効果は大きくなると考えらます。


中国の真の狙いも念頭に置く必要
 一方、中国側の本当の狙いが何か留意がより重要でしょう。中国側の喫緊の課題は、日米欧による半導体(関連製品)の輸出規制を撤廃させることです。日本人のビザなし渡航を復活させずに、日本に対して中国人への対等の措置を要求したり、原発処理水の放出に対して反対するなど、到底無理な難題を押し付けてきているのも、交渉材料として使っているのが明白です。
 しかし、日本人へのビザ免除の停止は、対中投資が大きく落ち込むリスクにつながるもので、中国側も自分の首を絞めかねません。団体観光の規制も旅行業界の不満につながっていました。一方、処理水排出を阻止しようにも、放出されてしまえば中国側の切るカードがなくなってしまいます。おそらく、処理水排出が迫れば、中国は日本への観光旅行の禁止措置や渡航中止勧告をちらつかせ、日本を揺さぶってくるのではと考えられます。


風評被害の解消にこの機会を利用すべき
 しかし、中国人観光客が多数来日することは、福島原発の風評被害を一掃する好機です。特に、中国のように報道の自由がない国では、正しい情報から国民が遮断され、官製フェイク情報に国民が支配されかねません。観光客に来てもらうことの最大のメリットは真実の日本に触れてもらえことにあります。実際に、来日した中国人観光客は気にせず日本で寿司を楽しんでいます。欧米など大半の国が日本産食品の輸入規制を撤廃し、風評被害に過ぎないことは来日した中国の方が口コミで広めていってくれるでしょう。




【原発処理水で中国】日本の水産物“輸入停止”に 来日観光客「わざと大げさに報じているだけ」



 韓国でも事故当初は日本の水産物に対する警戒が強かったものの、来訪した観光客の声が大きく世論を動かし始めています。韓国水産業者の間にも、原発からの排水に反対する野党の行動こそ風評被害につながっているといるとの考え方が広がりつつあります。韓国政府が、福島原発の処理水排出に際して、IAEAの判断に従うとの方針に転換したのも、対日関係を重視する保守政権交代への加えて、こうした世論(特に水産業者)の後押しがあったことはいうまでもありません。



 これに対して、日本国内では「科学的には危険ではないとわかるが、風評被害が心配」との声がまだ多く見られます。しかし、我々もこうした声がむしろ自ら風評被害を引き起こしていることに気がつかないといけません。



 実際、中国の官製メディアや韓国の野党系メディアも、日本国内の反対の声を引用して放出に反対しています。しかし、放出を先送りしとしても、いまだに残る2011年の事故の風評被害が解消するわけではありません。国内水産業の皆様の懸念はわからなくはないのですが、風評被害の解消には何が最善の戦略か考えてもらいたいものです。


 また、こういう時こそ、パフォーマンスしかできない政治家の出番です

。処理水が基準値以下で安全だということを証明するためにも、漁業関係者の方は重要閣僚や2011年当時に政権を担っていた民主党幹部(特にK元首相)に処理水をさらに安全な水準に薄めたものや、日本近海の海水を淡水化したものを公開の場で一緒に飲むように依頼されてはいかがでしょうか。昭和の政治家にはこうしたことを引き受ける漢気のある方が本当にいました。民主党も地に堕ちた人気を少しは回復させられるのでないでしょうか。


 同時に、韓国の野党幹部や中国首脳にもいっしょに自国の原発沖の海水を淡水化したものをを飲んで見るようにに要求するべきです。まず先方もいろいろ言い訳して敵前逃亡するでしょうから、結局は自国の原発がより多くの放射性物質を海に流していることの論理矛盾を世界に示すことになるのではと思います。


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