あちこち旅日記

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高齢者の情報・科学的リテラシーの実情について

 先週、「海外に行くならコロナワクチン接種すべきか?」との論評を投稿させていただき、多くのコメントをいただきました。



 コメントには賛否両論ありましたが、投稿したのは「伝聞情報をそのままうのみにせず、データと科学的知見をもって考えて欲しい」と思ったからです。弱毒化が進んだからといって、もう感染してもかまわないと思わず、また新たなウイルスが出てきた時にワクチン不信感が残っていては感染を抑制できないので、「このまま放置せずに、はっきり白黒つけて欲しい」との思いもありました。反対派の方のコメントはほぼ想定通りでしたが、NHKが報道していたような典型的なフェイク情報らしいものもいくつかありました。



 フェイク情報については、世界各国とも打ち消すのに苦労しているようです。先日、メイさんがフェイク情報と闘って原住民へのワクチン接種を勧めてきたブラジルの女性議員のことを投稿されていました。本当に頭が下がる立派な議員さんです。



 メイさんによると、mRNAワクチンを危険視する情報は、中露が拡散しているとの説もあるようです。mRNAワクチンの創薬技術のない両国が、米国メーカーを陥れていると考えれば合理性はありますが、証拠はありません。また、アクセス数を稼ぐために、意図的にSNSでフェイク情報を流している方もいる、などの様々な説もあります。それ自体もフェイク情報かもしれず、決めつけることもすべきではありません。


 一番いけないのが、SNSでの情報をうのみにして、政府やWHOの発表を否定してしまい、自身の思考も停止してしまうことです。もうそうなったら、マインドコントロールされた旧××教会の信者と同じで、抜け出るのが難しくなります。


 いずれにしても、皆さまも政府やWHOから公式に発表されている見解か、それを批判する論文も必ず原文と統計を見た上で判断されることを望みます。統計データも少ないサンプルで恣意的に使われているものがあるので注意してください。


 東京のオフィス街の通勤電車でもマスクをしない方が増えてきましたが、ここへきて新たな変異種XBBが流行してきており、沖縄など一部の地域では警戒水準になってきています。また、運動会シーズンで感染が広まり、学校閉鎖も続出しているそうです。中高一貫校と比べて授業の進度が遅い公立の進学校ではこの時期に感染してしまえば、受験生は1年を棒にふってしまいかねない痛手です。


 変異種への置き換わりにより、初期にワクチン接種をされた方や感染者も免疫を失ってしまっている可能性があります。再び政府が緊急事態宣言を出すような事態となり、楽しい夏休みを台無しにしないためにも、目先のことではなく、これまでの経験から早めに対策を打って欲しいです。最善のコロナ禍での経済対策は、感染を収束させることです。また、予防に対する個人の意識改革も必要です。将来ある受験生のいるご家族の方、お子さんが感染しても自分が倒れても困窮してしまう母子家庭のママさん、くれぐれも警戒してください。





 ところで、コメントの中に複数の方が言及されていた大変気になる意見がありました。それは「よくわからずワクチン接種する高齢者を危険にさらす」という趣旨のものです。


 実際には、コロナ感染による死亡率は若年層よりも高齢者の方が高く、ワクチン接種のメリットが大きい一方で、若年層の方がワクチンの副反応が大きいことが既にデータで検証されています。高齢者はきわめて賢明な判断をされていると思います。残念だったのがこうした指摘の背景に「高齢者=知識に乏しく正しい判断のできない人たち」という誤った意識を多くの国民が持っているのではと感じられたことでした。




「高齢者に科学的リテラシーがない」ことはない


 ここからが本日の本題です。


 では、本当に高齢者は科学的リテラシーがない方なのでしょうか、各種研究論文によると、IQは年齢とともに上昇することがわかっています。IQのピークは67歳前後ですが、その後の下落はするものの、下落ペースは緩やかです。


 一方、IQの構成要素は二つに分類されます。「計算能力」などの『情報処理のスピード』、「記憶力」といったものは流動性知能と呼ばれ、50歳中頃をピークにその後は急激に低下しますが、「言語能力」「知識力」といった『結晶性知能』は70歳を過ぎる頃まで向上し、その後は緩やかな低下するものの、90歳を目の前にしても40歳よりも高いそうです。加齢により運動能力が低下したり、反応が遅くなったり、記憶力は低下しますが、知識に基づいた判断力が低下するわけではありません。「知識力」については高齢者の方がむしろ若年層よりも高いです。


 重度の認知症でもない限り、ワクチン接種の是非については高齢者の方が正しい判断が出来ているとみるべきでしょう。むしろ、メディア情報に触れることのすくなくなった若年層の方が、SNSでのフェイク情報に騙されやすくなっています。コロナ対策については、若年層への周知徹底を強化するだけでなく、ワクチン接種を促すために行動経済学的アプローチで「ナッジ効果」を採り入れる必要があります。


金融知識も高齢者の方が豊富


 同様の問題は、金融知識についても言えます。日銀が行っている金融リテラシー調査では、年齢が上がるほど金融知識は豊富で、高齢者の方が若年層よりも知識水準が高いという結果が出ています。また、別の調査では金融トラブルに巻き込まれた方の割合は、若年層の方が多くなっています。


 特殊詐欺では高齢者が狙われやすいと思われている方が多いと思いますが、これは高齢者が多額の金融資産を保有しているためにほかなりません。いくら金融知識が乏しいからといって小学生は特殊詐欺の対象にはなりません。


https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/literacy_chosa/2022/pdf/22literacyr.pdf


 実際に、特殊詐欺に関わる若者には、自身の金融知識の乏しさが原因で多重債務者になった者たちが多いことを忘れてはなりません。中高生への金融教育の強化が進められていますが、一層の強化が望まれます。


高齢でも大活躍している囲碁・将棋の棋士


 藤井7冠の活躍ですっかり若者の競技のイメージがついてしまった将棋ですが、これも高齢者が活躍する競技の一つです。数百手の先を読む力は、記憶力が必要なため、加齢による衰えがありそうに見えますが、AIによる将棋ソフトが普及するまでは過去の棋譜の知識・様々な戦局の経験がモノをいう世界でした。


 実際に、故大山康晴十五世名人は、56歳の時に17歳年下の「ひふみん」こと加藤一二三王将(当時)に挑戦し、王座を奪取しています。また、タイトル奪取はなりませんでしたが、強豪を次々と破り、予選を勝ち抜いて66歳の時に40歳年下の南芳一棋王(当時)への挑戦権を獲得しています。大山康晴十五世名人は69歳で亡くなるまで、名人への挑戦権を決めるA級に在籍し活躍し続けました。風格といい、在位期間の長さといい、私の中では将棋の名人といったら、真っ先にイメージするのは大山康晴さんです。


 そのひふみんも77歳まで現役を続けたことは、皆さまも記憶に新しいと思います。


 囲碁では、もっとすごい記録があります。現役最年長棋士の杉内寿子八段(1927年3月6日生)は2023年4月に十段戦予選において横田日菜乃初段を破り、96歳と1カ月という女性棋士としての最年長記録を更新しています。ちなみに、男性棋士を含めた最年長勝利記録は、杉内八段の夫の雅男九段(2017年死去)で96歳10カ月です。ご夫妻そろってすごいですね。


「高齢者はIT弱者」の誤解


 IT化の推進で、反対論が出る時によく引き合いに出されるのがIT弱者の存在であり、高齢者がその典型とされます。しかし、これも事実でしょうか。


 以下のデータは高齢者社会白書に掲載されている年齢階層別インターネットの利用率です。2020年時点で9割以上が利用している現役世代よりは低いものの、70歳代でも既に59.6%に達しています。10年前には60歳代の利用率が64.4%でしたので、これがそのまま持ち上がった形です。ここから推察すると、10年後には70歳代の9割がインターネットを使いこなしていることになり、80歳以上もほぼ半数が使っていることになると思います。



シニア層よ大志を抱け!

 要するに、高齢者がITを使いこなせないのではなく、過去にITを利用したことがない方が、新たに習得しようとしないことが原因となっています。学歴が高いであろう企業の幹部の方が、全てを部下や秘書が
やってくれるので使えない方が多いです。


 同様なことは、キャッシュレス決済でも同様です。高齢者には現金至上主義の方も多いのは根は一緒です。高齢者に現金至上主義者が多いのは、キャッシュレスを使えないのではなく、使ったことがないので便利さがわからず、一方で「今のままでも不便でない」「新しいことをするのが面倒だ」という方が多いためにほかなりません。


 人口減少社会において、経済成長を維持するのには、高齢者の人材活用とともに、社会全体の生産性の引上げが必要であり、高度IT技術の利用はその核になります。コスパだけでなく、タイパへの意識を高め、待ち行列という無償労働を社会全体で減らすことも必要です。シニアの皆さまには、現状に満足せずにより豊かな生活を目指すべく大志を抱いて欲しいです。高齢者に足を突っ込み始めた私もチャレンジ精神を忘れずにいるつもりです。


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