あちこち旅日記

乗り物好きの旅行日記。コスパのよい贅沢な旅がモットー。飛行機、鉄道の搭乗乗車体験記やグルメ情報をご紹介します。

大阪万博入場料について:高いの?安いの?適正なの?

 先日、大阪万博の入場料が決まったとの報道がありました。大人は7500円、12歳以上17歳以下は4200円、4歳以上11歳以下は大人の1800円、3歳以下は無料、というものですが、「平日券」は、大人6000円、12歳以上17歳以下は3500円、4歳以上11歳以下が1500円となっており、年内に販売がはじまる前売券では、すいていることが予想される会期前半(開幕の2025年4月13日から2週間以内に入場する場合)の「開幕券」は、大人が4000円、中高生が2200円、子どもが1000円、また、開幕からおよそ3か月以内に入場する「前期券」は大人が5000円、中高生が3000円、子どもが1200円となっています。



 これに対して「高いのでは」とのトーンの報道が多くみられます。地元経済界からは入場料は適正であるとの意見を発信し、正当化に努める動きが出ています。




 ところで、この入場料は過去の開催と比べてどうだったのでしょうか。1970年の大阪万博では大人800円、2005年の愛知万博では4,600円でした。1970年当時、2005年当時と比べると2022に日本の消費者物価はそれぞれ約3.5倍、約7%上昇しているものの、物価上昇率よりも大幅に高くなっています。一方、2022年の日本の一人当たり名目GDPは1970年当時と比べて6.2倍になっています。日本の消費者の購買力という視点では、1970年の大阪万博並みなので、割高とはいえないと思います。また、様々な入場料金が設定されており、開幕直後に行けば割安に入場できます。


 一方、1970年の時点では1ドル=360円でした。直近では円高といえどもドル建でみたら、入場料は1970年当時より高くなっていることは否めません。


 では、2021年のドバイ万博と比べたらいかがでしょうか。ドバイ万博では1日パスは95ディルハム(当時1AED=約30円、現在約40円)で、当時のレートで2850円、現在のレートで約3800円で販売されていました。ドバイの物価水準の高さを考えると、今回の大阪万博の入場料と比べるとかなり割安でした。


 もっとも、入場料の設定には2つの考え方があります。


 第一には、営利事業として考えた場合、事業者は売上高(入場者数×入場料)を最大化させるように料金を設定します。または、長期的に考えて、顧客満足度を高めるような料金設定を行うはずです。料金を値上げしても、その分入場者数が抑えられ、ライドの待ち時間を短縮できれば、顧客満足度が逆に高まるかもしれません。


 10月1日より東京ディズニーランド(TDL)の価格体系が変わり、大人10000円超えになるとの報道が昨日ありました。これに対する賛否も分かれているようですが、私がまだTDLの入場料は米国と比べてもはるかに安く、混雑を改善できるのであればもっと値上げをするのは企業行動としても合理的と考えています。



 値上げした分待ち時間が減るならば、その分自由な時間が増えます。学生さんなら行列して待っているよりも、減った滞在時間分早く帰ってにアルバイトでもしてもらい、それを入場料の値上げ分に充当してもらえば、日本のGDP も増え、人手不足対策にもなります(実際には、行列が少ないともっと遊んでいきたいということになるために滞在時間は減らず、結果的にライド当たり入場料は変らないかむしろ下がることになると考えられます)。コスパよりタイパという考え方が受け入れられつつある中で、値上げは理解され、むしろ好感する方も多いのではないでしょうか。


 「夢の国でなくなる」「気軽に行けなくなる」とのご意見もありますが、気軽に行けないから夢の国であることも事実です。「庶民でも買えるように、ルイヴィトンやプラダの値段を下げろ」という方はいらっしゃいません。価格を下げたら、ブランド価値が下がりかえって苦情が殺到するのではないでしょうか。これはマンションの分譲価格でも言えます。そもそも価格設定や営業戦略は企業の裁量の範囲であり、消費者もそれを拒む(行かない・買わない)自由があります。


 もう一つの考え方は、できる限り多くの方に来て欲しいというもので、その場合は入場料は経費をカバーできるぎりぎりの線に設定されます。当局も今回については料金見直しの理由について「保安費用などの経費が膨れ上がったため」としており、コストカバーがスタンスと思われます。


 ところで、パビリオン「日本館」の建設工事の入札が成立せず、近畿地方整備局は、開幕に間に合わないおそれがあるとして、事業者を任意で決める随意契約に切り替えると報じられています。さらに、コストが膨れ上がる恐れがあります。



 コロナ禍の折、まさか事務局が1970年万博(6422万人)や2002年上海万博(7308万人)超えを狙うということは考えにくく、会期中の総入場者数は約2820万人になるとの想定も妥当と思われます。


 私は2021年にドバイ万博を視察してきました。コロナ禍で入場者数は当初目標の2500万人に対し2300万人を下回りましたが、日中40度を超す酷暑下では長蛇の行列を回避できたことは不幸中の幸いでした(それでも日本館は人気で1時間半待ちでした)。2015年のミラノ万博の入場者も2100万人でした。むしろ入場料を下げて無理な集客はしてほしくないところです。



 もっとも、物価が日本よりも高いドバイと比べて開催経費がなぜ膨れ上がるのかについては疑問があります。また、収益事業であるディズニーランドや、ユニバーサルスタジオの入場料が国際的にも割安で、公費を投入している万博が海外の万博と比べて割高になるのもおかしな話です。人手不足や資材高騰で建設コストが膨れ上がっていることはわかりますが、そもそも設計の段階で問題はなかったのか、運営の仕組みに問題はないのか、東京五輪を巡る汚職も報じられただけに疑念が残ります。


 ちなみに、東京五輪で談合が問題視された事務局に多くの人員を占めていたD社は万博誘致委員会のオフィシャルパートナーも務めています。D社は2019年1月に国と大阪府・市、経済界の協力のもとで万博協会が設立されて以降、公式キャラクター「ミャクミャク」のライセンス事業を含め、昨年末までに計9件の事業を落札しています。いずれ監査が行われると思いますが、しっかりやってほしいです。


 また、当日の警備や、チケット販売についても、最先端のデジタル対応がきちんと行われているのかも気になります。まさか、入場ゲートで当日チケットを販売していたり、飲食・物販施設で小銭をじゃらじゃらなんてことはないと信じたいです。ドバイ万博はほぼ完全キャッシュレスで運営されていましたし、チケットは原則としてオンライン販売で、QRコードを示して入場する方式でした。


 一方、ドバイ万博では、コロナ対策から検温、陰性証明もしくはワクチン接種証明の提示が荷物検査と同時に実施され、ここにかなりの時間を擁していました。おそらく、陰性証明もしくはワクチン接種証明は不要になるはずですし、顔認証でチケット見せずにスムースに入場できる技術は既に確立できています(東京ドームや海外の航空会社では既に実用化されています)。パスポートやマイナンバーカード、運転免許証など顔写真が搭載されているIDの番号と紐づけることで、過去の犯罪歴をきちんと把握し、テロリストや反社会的組織構成員などの要注意人物をきちんと排除することも容易です。また、入場券の不正転売も防げます。入場ゲートでのチェックもほぼ無人化し、時間も短縮できるのではないでしょうか。こうした技術を導入すれば、警備費用が膨れ上がるということはないどころか、逆に削減できるはずです。


 大阪万博で、国内外の皆さんが期待するのは、ハイテクの国日本の最新技術です。世界があっと驚く技術を見せて欲しいですし、当日のチケットを現金販売したり、入場者が飲食物販の支払いでまごついたりして長蛇の行列ができ、世界に大恥をかかないようにくれぐれもお願いしたいです。


あちこち旅日記 - にほんブログ村


 参考になったら、「プロフィール」のバナーをクリックお願いします。過去の記事リストがあります。シリーズ通してご覧いただければ嬉しいです。

×

非ログインユーザーとして返信する