あちこち旅日記

乗り物好きの旅行日記。コスパのよい贅沢な旅がモットー。飛行機、鉄道の搭乗乗車体験記やグルメ情報をご紹介します。

科学は嘘をつかない:福島の風評被害とノーベル医学生理学賞

 先日、風評被害に苦しむ福島県の生産者を支援すべく、アンテナショップを訪問し、訪問記を投稿しました。その際に購入してきた喜多方ラーメンを食べてみましたが、スープは絶妙な味で、麺の食感も最高。早速福島県に行きたくなってしまいました。




風評被害はあまり広がらず外交戦略は珍しく成功
 ところで、心無い政治家や評論家による許せない発言は相変わらずですが、国内の水産物の消費や価格への影響はあまり見られないようです。風評被害に苦しむ福島の生産者への支援に取り組む過程で、福島産品のおいしさを私のように再認識される方も少なくないようです。「禍転じて福」となってくれればよいと思う次第です。


 IAEAの総会では日本への批判はほとんどなく、批判の急先鋒だった中国の孤立が目立ったようです。3日間の演説で登壇した133カ国のうち、批判したのは中国だけでした。毎度、要領の悪さが目立つ日本の外交ですが、今回ばかりは見事な勝利だったという感がします。前の内閣では答弁が不安定で追及を浴びた高市大臣も今回は名誉挽回したようです。「科学は嘘をつかない」ということを訴えた実直な取り組みが功を奏した形になったと思います。




 そもそも、中国が日本を批判してきた背景には、日米欧による半導体制裁に対する取引材料として中国が処理水問題を持ち出してきていることがありました。中国にとっては、どんなに安全でも日本を批判する必要があったわけです。説明不足というよりも「聞く耳持たず」という状況でこれを批判されるのはきわめて心外です。中国がこういった手段に出てくることは想定内であり、直前に日本への団体観光を解禁していたのも、効果を高めるためであったと考えられます。しかし、非科学的な行動をとればとるほど、中国の矛盾は露呈します。IAEAの加盟国もそれを十分理解していたわけです。政治や経済により科学が捻じ曲げられるということは許されるものではありません。ブレずに科学的な説明で押し通した政府の戦略を評価したいと思います。


 もっとも、「中国側の反応は想定外だった」とか「処理水」を「汚染水」と言い間違えるなど、前農水相の発言はとんでもないものがありました。中国メディアによるフェイク情報を拡散させ、「処理水」を「汚染水」と呼んでいた一部の野党は、前農水相の失策と首相の任命責任を追及することができず、大きな問題にならないまま内閣改造に至ってしまいました。むしろこちらの方が糾弾されるべきでした。


ノーベル医学生理学賞にmRNAワクチン開発者
 ところで、「科学は嘘をつかない」といえば、今年のノーベル医学生理学賞にカタリン・カリコ氏とドリュー・ワイスマン氏が選ばれました。新型コロナウイルス感染症に対するmRNAワクチンへの貢献が評価された結果です。


 mRNAワクチンといえば、反ワクチン派によるSNSへの投稿が多い分野ですが、その多くはフェイク情報や不正確な情報としてファクトチェックにかかってくるものであり、科学的といえるものではありません。また、「外資企業を儲けさせるのはけしからん」という見当違いな批判もあります。両氏の研究は製薬会社の米ファイザーや独ビオンテック、米モデルナがmRNAを利用したワクチン生産で新たな手法を採る際の基礎となったものですが、基礎研究の段階で十分に評価されていなかった両氏の研究を評価し資金提供を行うとともに、迅速な開発を行ってきた欧米系メーカーの勇気ある投資の貢献も小さくありません。「外資企業を儲けさせるのはけしからん」というのは、成功者へのねたみか重商主義以外の何物でもありません。むしろ、開発競争に後れをとった我が国の医薬品メーカーの体たらくこそ問題視すべきでしょう。


ワクチンの評価も科学的に決着してほしい
 ところで、両氏がノーベル賞を受賞したことで、mRNAワクチンは一気に権威を得た形になってしまいました。私はワクチンの安全性については、専門家同士による科学的な知見に基づいた議論をして欲しいと思っていましたが、これで決着が着いてしまうのでしょうか。反ワクチン派の方たちは、両氏の受賞後静まりかえっているようですが、ぜひ対抗しうるだけのノーベル賞級の研究者を担ぎ出して正面から議論をして欲しいものです。 


 ワクチン接種で亡くなった方がいるのは残念ですが、アレルギー疾患の既往症があるにもかかわらず注意を無視して接種した方、接種後にハードなスポーツをして亡くなった方が多くいらっしゃいます。接種は強制ではなく、署名した上で自己責任で受けられていたはずで、それを怠っていたならば同情はできません。


 それでも、本人の責任といえない理由でワクチン接種で後遺症に苦しみ亡くなった方がいらっしゃるかもしれません。しかし、コロナ感染の後遺症で苦しみ、また重症化し亡くなった方の数がはるかにこれを上回っています。仮に1万人が副反応で亡くなっても、1000万人の命が救われたなら良しとすべきで、ワクチン接種を奨励したことは政策的に合理性があったと思います。


 こうした中、免疫が効きにくい変異種の感染拡大で、ワクチンへの関心も低下しつつあります。私も今となってはワクチンよりもマスクと手洗いを重視した方がよいとは思いますが、アンチ「マスクと手洗い」派もいるのは残念なところです。


 mRNAワクチンは、癌の予防にも期待されています。また、いつ治療薬のない新型感染症が広がるかもしれません。誤った情報により反ワクチンへの意識が国民に刷り込まれれば、今後のワクチン開発に影響が出て、人類にとって大きな危機となりかねません。


フェイク情報や不正確な情報が氾濫
 ファクトチェックをしてみるとわかるのですが、反ワクチン派のコメント(特にSNS上のもの)を見ると、素人の私でもすぐに明らかにおかしいとわかる稚拙なものが目立ちます。例えば、実験ではラットは2年以内に全て死んだという噴飯もの(もともとラットの寿命は2年よりもはるかに短い)もありますが、「ワクチンを接種するとこどもができなくなる」など多くは既に誤情報として指摘されているものです。また、「政府やWHOは信用できない、SNSを信じろ」という大変危険な考えも見られます。政府やWHOの見解は多くの専門家のファクトチェックを受けていますが、SNS情報は無責任にチェックなしに流れています。以下、私がファクトチェックした典型的なフェイク情報・不正確な情報です。


①WHOや外国政府がワクチン不使用を推奨・・・フェイク情報。WHOやいくつかの外国政府は弱毒化によりワクチン接種の推奨を不要とする声明を発していますが、「使用しないことを推奨」する声明を出したことは確認できません。


②ワクチン接種すると感染しやすくなると米FDAが発表・・・フェイク情報。変異種に免疫が効きにくくなっており、ワクチン接種したとしても感染を完全に防げなくなるとの趣旨のレポートを発表していますが、ワクチン接種するとむしろ感染しやすくなる、といった発表は確認できません。


③ワクチン接種推奨時に日本では超過死亡率が上昇・・・不正確。ワクチン接種推奨は、コロナ感染が急拡大し、医療崩壊しているタイミングで起きているので、ワクチンによる副反応ではなくコロナ感染自体による死亡や、救急車が来ないなどの医療崩壊の被害者が増えていた可能性が高いと考えられます。最近では119番もつながりにくく、火災や交通事故で救える命も救えなくなってきています。そもそも、超過死亡率とワクチンとの関係は何も検証されていません。




④世界一ワクチン接種率の高い日本なのに死亡率が高い・・・不正確。世界一高齢化が進む日本では、高齢者ほどワクチン接種率が高くなっています。もともと高齢者の死亡率は高いため、ワクチン接種率と死亡率との間に正の相関が生じてもおかしくはありません。なお2020年以降、日本人の死亡率は確かに上昇し、平均寿命は短くなっていますが、高齢者の平均寿命の落ち込みは若年層よりもむしろ小さく、ワクチン接種による死亡率の抑制効果があったことが見られます。



⑤ワクチン接種者でも死亡率が高い・・・不正確。上記④と同様ですが、変異種の拡大で免疫がつきにくくなると、感染率や死亡率が接種者と非接種者で逆転してもおかしくはありません。死亡率の比較に際しては同年齢階層や属性(持病の有無)で死亡率を比較しないと意味がありません。政府にはこうした批判を反証するためにもより詳細なデータの開示が望まれます。


 またNHKでは、フェイク情報の出所が、中国やロシアなどmRNAを開発できず、国際社会と対立している国からのものが多くを占めていることを報じています。処理水を汚染水と呼び、危険物質が含まれているという中国発のフェイク情報が氾濫していることと根は共通しています。


 我が国発の情報でも英文による科学的記事を読んでいない方が誤訳記事やフェイク情報を引用しているケースも見られます。さらに卑劣なのが、怪しい自称医師や研究者(なかには国内メーカーと共同で別のワクチンの開発に携わっている方もいます)による公正とは言えない情報も氾濫しています。ワクチンの議論も、政治・信条や経済的利害で行うのではなく、科学的に決着をつけて欲しいと願うばかりです。




国会議員よりも学術会議メンバーこそ


 処理水問題にしろ、ワクチン問題についても、こういった時こそ科学的な見地から情報発信すべきなのが学術会議のはずですが、彼らから重要なメッセージはほとんど出ていません。国会議員や地方の首長の報酬や経費問題にばかり批判が集まりますが、彼らはよりひどいのが学術会議メンバーであり、報酬泥棒と言いたくなります。
 科学的な見地からの議論が必要なのは理工系の分野だけでありません。例えば、国家存亡の危機といえるのが、少子化問題です。100年後には日本の人口は5000万人割れとの社会保障人口問題研究所の予測がありますが、よく精査するとこれでもかなり楽観的に思えます。例えば、2026年のひのえうま効果を全く想定していない点が指摘できます。ちなみにひのえうまの年の出生率低下は1906年よりも1966年の方がひどく、前年より出生数は25%も減少しています。米国の日系人の間でもひのえうま効果はみられるそうです。時代遅れの迷信などで片付けられません。
 広島・長崎の原爆投下でも、阪神淡路大震災でも東日本大震災も、多くの方が無くなりましたが、それでも日本の人口が半減したわけではありません。少子化問題はあまりにも軽視されている感があります。日本の歴史を見ると、戦国時代から江戸時代初期の16~17世紀にかけて人口が急増した時期がありましたが、大変興味深いところです。こういった視点からの少子化対策は歴史学者の方にもどんどん提言し、知恵を結集してほしいと思うところです。



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