あちこち旅日記

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外国人が増えると本当に治安が悪くなるの?:中東産油国の事情を見る

 「外国人が増えると犯罪が増える」との意見をたまに聞く事があります。もっとも、実際に外国人観光客が増えて犯罪が増えたという話はあまり聞きません。「異なる価値観の方たちを受け入れたくない」、「めんどうな対応は嫌だ」、「そもそも観光客に来てほしくない」といった自分勝手な価値観による意見が多いように感じます。


 私自身、以前外国人観光客によると思われる置き引きにあったことがありますが、これはあくまで状況から判断した事実にすぎず、外国人=悪人とは思っているわけではありません。あくまで私の不注意によるものです。






外国人観光客や労働力に頼らざるを得ない日本
 輸出製造業の国際競争力が低下したことで、日本経済、特に地方部が外国人観光客に依存していかないとやっていけないことは明白です。また、人口減少がさらに深刻化すると予想される日本では、いずれ移民受入論議が活発化してくることは避けられません。そこで本日は、外国人が増えると本当に日本の治安が悪くなるのか、について考えてみたいと思います。


欧米では不法就労者が問題となっているが・・・
 外国人が増えると治安が悪くなるという考え方の背景には、無資格での入国、あるいは観光ビザで来日したまま就労してしまうオーバーステイの問題があります。実際に、欧米ではこういった外国人の違法就労が多く、低賃金ゆえに犯罪行為に身を染めたり、また地元の若者の雇用機会を奪うことでこうした自国の若年層失業者たちが犯罪を犯していくといった負の循環が起きています。


外国人に大きく依存する中東産油国の治安は良好
 しかし、外国人労働者が多いのにもかかわらず、治安がよい国があります。それは、中東の産油国です。例えば、アラブ首長国連邦(UAE)やカタールでは外国人の人口が総人口の約9割を占めています。自国民が大半が公務員として働いている一方、外国人は民間部門で働いています。公務員が高給とりでかつ労働時間も短いことから、自国民の多くは外資系金融機関などの一部を除き民間部門で働きたがらず、民間企業では外国人に頼らざるを得ません。また、メイドや建設業界などではブルーカラーはほとんど外国人です。


 外国人が多いのにもかかわらず、不法滞在が少ないのは、スポンサーとなる雇用主がいなければ、就労ビザが発給されないためです。このため、事実上転職は難しくなっています。UAEでは転職は可能ですが、一定期間以上失業状態のまま居住することができず、就労ビザが切れたら原則帰国しないといけません。もちろん犯罪などがあれば、即刻退去処分となります。


 中東産油国では政治面でも国王や王族がほとんどの閣僚を占めており、国民の参政権も限定されていますが、不満を示す者はほとんどいません(非産油国では「アラブの春」といった反政府デモが起きましたが、産油国ではこうした動きは限定的でした)。外国人たちは、中東の国では低賃金労働者ですが、自国に帰ればこのような高給は稼げないので、おとなしく法律に従っています。こうした状況は「幸福な監視社会」と言われています。私は何度か出張で中東を訪れていますが、治安の良さだけでなく、民度が高いのも印象的です。中東=紛争の印象があるのは、経済的に困窮し、イスラム過激派の台頭を許している国だけです。


 カタールでは、かつて「カファラ」と呼ばれる厳格なスポンサー制度が存在していました。雇用主が外国人労働者のパスポートを預かり、逃亡できないようにしていました。さすがにこの制度は「非人道的だ」と国際的に非難を受け、今では廃止されています。ちなみに、今回のワールドカップで施設建設で6500人の外国人が死亡したと報じられていますが、これは虐待死ではなく、気温40度を超す中での工事により多くの方が熱中症で亡くなったためです(そもそも、こんな場所でワールドカップを開催すること自体が間違っています)。


外国人の蒸発問題の原因は日本の雇い主にある
 さて、日本ではどうでしょうか。外国人研修生の蒸発が相次ぐなど、近年では欧米と状況が似てきています。もっとも、こうした状況にしてしまったのは、我々日本人に責任があります。


 第一に、蒸発する外国人研修生の多くは、事実上低賃金の労働力として扱われ、さらに重労働を課されています。来日時に多額の渡航費や手数料をエージェントにとられ、返済のために生活の困窮している人たちも少なくありません。また、賃金の不払いや、虐待を受けるなどの例も報告されており、よりよい待遇を求めて蒸発するのも理解できる面があります。


 中東の制度にも人権上の問題はありますが、労働者からエージェントが手数料を取ることを禁止すると同時に渡航費用を雇い主負担とすれば、転職による雇い主の損失が大きくなるため、不当な雇用条件で雇うことや虐待行為も少なくなるはずです。一方、外国人の転職も制限し、スポンサーがいなければ在留資格を取り消すようにすれば、雇い主の権利も守ることができます。


給与の現金払いこそ禁止すべきだ
 第二に、日本の法律も不正を生みやすい原因を作り出している側面があるということです。その際たる例が、労働基準法における現物給与の禁止(通貨払いの原則)です。本来は、これは現物支給を禁止するための法律であり、銀行口座への振込みは例外的に認められています。しかし、マネーロンダリング防止の観点から、外国人が銀行口座を保有するのは制限が多く、多くのシーンで現金払いが行われています。しかし、この現金払いこそが脱税などの不正を生み、賃金未払などの原因を作り出しているといえます。23年4月より電子マネーによる支払いが認められるようになったことは大きな進歩ですが、不正・脱税防止や賃金未払を防止するために、日本人を含めて現金支払いこそ禁止し給与支払いを監視する仕組みを設けるべきでしょう。


外国人への最小限の監視は彼らにもメリット
 左派の方は、「個人情報は保護されなければならない」「監視社会は戦前の暗黒の時代を思い起させる」と、監視事態を一律に批判する傾向にあるようです。確かに幸福な自由社会が理想かもしれませんが、自由社会の追求は犯罪の増加や治安の悪化というリスクも伴います。必要最小限であれば、国民の福祉のために監視を受け入れることはやむを得ないのではないでしょうか。


 例えば、かつて在日外国人の指紋押捺が問題視されました。しかし、今では多くの国が入国する外国人の指紋を採取しています。防犯データベースのために成人であれば日本人を含めて成人の指紋を登録するのは私はやむなしと考えます(その一方で、指紋だけでは犯罪の根拠と立証できないなど、冤罪防止のための歯止めも必要ですが)。実際に、危険運転が問題視されるようになり、ドライブレコーダーが普及しだしましたが、これをプライバシーの侵害と訴える方を見たことがありません。犯罪防止のための監視カメラについても、国民の間に定着してきています。お金を借りるためには、信用情報を提供する必要があるのと同じように、幸福で安全な社会を実現するためには、最低限我々も譲る必要があります。


 外国人の方に日本での生活や観光を安心して楽しんでもらうためにも、ある程度の協力を求めても受け入れてもらえるのではないでしょうか。


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