あちこち旅日記

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外国では現地の法律や慣習に従う必要があります:荒井秘書官は脇が甘かったけど・・

 先週末、荒井首相秘書官がLGBT(性的マイノリティー)に対する軽率な発言で更迭されました。その後も国会で岸田首相がこの問題で答弁に追われました。確かにオフレコとの約束を破るようなメディアを懇談の場に招き入れ、最近の流れを読めない発言をした荒井氏も脇が甘かったと思います。しかし、この問題はもし国が変われば全く立場が異なることになっていたはずです。


 例えば、イスラム教を国教とし、シャーリア(イスラム教に基づく法律)による刑法を採用している国では同性愛者は厳罰に処せられます。主要な国や近隣諸国をみると、サウジアラビア、イラン、パキスタン、カタール、ブルネイなどでは死刑判決が下ったことがあります。また、マレーシアでは死刑判決が出されたという話は近年聞きませんが、昨年11月に首相に就任したアンワル・ビン・イブラハム氏も副首相だった1998年に同性愛の嫌疑をかけられ、ムチ打ちの上投獄されました。現在では政治的な対立からアンワル氏が無実の罪を着せられたとの見方が多いのですが、同国で同性愛が違法であることには変わりありません。クウェートでは、「異性に見せかける服装をする」ことも犯罪です。IKKOさんが同国に行ったら懲役刑になるかもしれません。




 かつてイスラム圏の国では戦争により人口が激減したことがたびたびありました。一夫多妻制は男尊女卑などではなく、残された未亡人を数が減った男性たちが扶養していく必要があったためとの説が有力です。イスラム教が同性愛を禁止した背景にも、人口減少社会という事情があったようです。


 同性婚を禁止しても人口減少は食い止めることが難しいという主張もあります。確かに、少子化は経済問題の様相が強く、その通りだと思いますが、この主張をもってイスラム教の教義を全て否定するのもいかがかと思います。これはタリバンが女性の就業や教育を否定していることを人権侵害だと批判することと、次元が異なる問題です(現在はほとんどのイスラム教国が女性の就労や大学進学を認めています)。


 豚肉を食べてはいけない、飲酒はダメ、ギャンブルはダメ、などとともに同性愛の禁止はイスラム教を信仰する方にとっては大事な教義となっています。彼らは子供のころから、これが正しいものだと信じてきています。かつて国連の場でも同性愛者への処罰を廃止するよう求める決議案が上がりましたが、イスラム諸国の反対により採決が見送られました。


 同様な問題に、アメリカにおける人工中絶の問題があります。共和党の支持基盤である福音派は人工中絶の禁止を主張していますが、民主党の支持者は女性の権利を主張して対立しています。どちらも信念に基づいて主張しています。あくまでもアメリカの内政問題であり、国際世論が干渉すべきものではありません。逆にイスラム教徒を異質の文化であると、欧米諸国も批判すべきではありません。


 私の今回の世界一周旅行では、インドネシア、モロッコの2つのイスラム教を国教とする国を訪問し、カタールの航空会社を利用し、カタールの首都ドーハの空港でトランジットしました。幸いなことに、インドネシアやモロッコの戒律はそれほど厳しくなく、インドネシアでは信教の自由が保証され、モロッコではキリスト教とユダヤ教は認められています。カタールは厳格なイスラム教国ではありますが、外国人の異教徒に対しては寛容で、カタール航空はお酒のサービスがあります。また、ワールドカップ開催期間中は、外国人に限り同性の2人が同じ部屋に宿泊することを認め、限られた場所でしたがビールの販売も許可しました。イスラム教の国が外国人を尊重し配慮してくれていることを忘れてはいけません。


 そもそも、海外旅行においては我々は現地の文化を尊重し、法律に従う義務があります。知らなかったでは済まされず、日本では問題ないことでも現地では犯罪とみなされ刑事罰を受けることもあります。また、我々が当然正しいと思っていることが、現地の方は不快にさせてしまうこともあり得ます。実際に、欧州ではメディアが報道の自由を振りかざしてイスラム教徒の風刺画を掲載したことでテロが起きたこともありました。日本でもかつてTVのバラエティ番組で、キリストを揶揄するギャグを使い(〇〇たち△△族で、懺悔の時にバケツから水を落としていたやつです)、バチカンから抗議を受けたことがありました。マレーシアならば荒井氏は英雄になり、切り捨てた岸田首相や追及している野党議員の方が悪者になっていたかもしれません。


 ところで、日本国憲法には宗教の自由が保証されていますが、憲法にも民法にも同性婚に関しての条文はありません。婚姻は両性の合意のみに基づいて成立すると規定する憲法24条の解釈について「同性婚制度を認めることは想定されていないものと承知している」との松野官房長官は考えを示しています。一方で、「憲法第24条が、同性婚制度の導入を禁止しているのか、許容しているかについて、特定の立場に立っているわけではない」と述べ、今後の議論の余地を残しています。


 家族の在り方については、党派を超えて様々な意見があります。「G7の中で同性婚を認めていないのは日本だけだ」などという主体性のないものではなく、国民の価値観のコンセンサスを明らかにするためにも、憲法改正の必要性からオープンに議論すべきではないでしょうか。


 仮に、イスラム教徒の大家さんが所有するアパートに同性愛者が入居しようとして、「同性愛はアラーの神が許さない」という理由に断ったことで訴えられ、人権侵害だと係争になったら、現在の法律で裁判所はどういった判断をするのでしょうか。


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