あちこち旅日記

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税金を活用して観光振興と観光公害対策を考えたら?

 週末どこに出かけても、内外観光客があふれかえるようになりました。一方で、コロナ感染者数も急増しています。平日の通勤時間帯の都心部のマスク装着率は高いのですが、休日になると一気にマスク装着率は低下します。先日は、いかにも具合が悪そうで咳込んでいる女性が顎マスクで、酔っ払いのようにふらつきながら車両内を移動していました。迷惑なものです。5類移行で、病院の診察も受けない方も急増しているようです。マスクしないで会話しているグループを見たら距離をとるように、また店員がマスクをつけていない飲食店には入らないように心掛けています。ワクチン接種は5回してきましたが、現在流行中のXBB種の感染は防げない可能性も大きいため、マスクは家以外で常に着用し、自分の身は自分で守ることを徹底しています。


 さて、ここからが本日の本題です。


 観光客増加で経済は盛り上がりを見せていますが、様々な弊害も目立ってきています。ホテル代が値上がりしビジネス出張のホテル手配も難しくなってきていることや(いわゆるクラウドアウト効果)、道路渋滞、ゴミの増加といった観光公害(外部不経済)も発生しています。



 こうした外部不経済の対策として有効なのは「税金の活用」です。ただし、ここでいう「税金の活用」とは財政支出のことでなく、観光客への課税を強化して観光客数を抑制したり、公害対策の費用に充当したり、資金をプールしておいて感染症が再流行した際の関連業者の方への支援費用として活用するという考え方です。


 例えば、観光客が捨てるゴミの回収費用は、住民が負担しています。住民のうち、観光業に携わる方は一部しかないので、その他の住民が税金を負担していることになります。これは迷惑以外の何物でもありません(だから観光公害という声が出てきます)。そこで、その土地で宿泊する観光客にも住民税に相当する税金を公平に負担してもらう仕組みが必要です。


 その代表的なものが宿泊税です。現在既に宿泊税を導入している自治体としては東京都、大阪府、福岡県(福岡市、北九州市)、京都市、金沢市、倶知安町(北海道)、長崎市などがあり、他にも導入の動きが相次いでいるようです。税率は最低100円から最高で1000円(宿泊料5万円)の京都府・京都市までまちまちで、宿泊料により軽減措置もあります。また、北海道倶知安町のように定率(2%)課税を行っているところもあります。


 もっとも、この水準は地元住民が負担している住民税の水準と比べても低すぎます。例えば、課税所得365万円の方であれば、住民税負担は所得割部分だけで10%の36.5万円になります。単純に日割り計算すると1日当たり1,000円になります。一方でこれは海外の大都市と比べても特に割高というほどではありません(付加価値税込みだと、欧米と比べるとむしろ割安だと思います)。


 また、定率課税すると実費で割安に泊まれる企業の保養所等への課税が軽くなりすぎてしまうといった問題もあります。この問題は既に各方面から指摘されているようです(各地で定額課税が主流なのはこのためですが、低宿泊料の場合免除というのは疑問を感じます)。


 かつて日本には1940年(昭和15年)に設けられた遊興飲食税があり、料理飲食等消費税、特別地方消費税とその名を変えてきましたが、7,500円を超える飲食料金や、15,000円を超える宿泊料金に課税する租税がありました。もともとは贅沢への課税という性格のあったこの税金は、消費税との二重課税であると指摘され、2000年3月末をもって廃止されています。また、この税金は、観光客だけでなく住民にも課税されていました。しかし観光振興のための目的税として宿泊税と位置付け、非住民だけに課税すればよいはずです。


 また、二重課税が問題ということであれば、解消すべきは居住地で支払っている住民税との二重課税の方です。国内観光客には確定申告で国内旅行時に支払った宿泊税を一部還付してもらう仕組みにすれば二重課税の問題は解消・軽減されるはずです。


 鉱泉浴場が所在する市町村が、鉱泉浴場における入湯に対して課している入湯税との二重課税もあります。入湯税は観光に依存する小さな自治体には貴重な財源であり、観光振興にも必要ですが、宿泊しても温泉を利用しない方(例えば、病気やケガで入浴できない方や、宴会で酔っぱらって入浴しない方、鉱泉でない部屋風呂を利用する方)にも課税するのは不公平です。入湯税は宿泊税に一元化すればよいのではないでしょうか(日帰り温泉客には別途課税すればよいだけの話です)。


 なお、入湯税は修学旅行客には免除になっています。そももそ学生・生徒は住民税負担はもともとないので、宿泊税も同様に免除しても矛盾は生じません。修学旅行の負担軽減のためにも宿泊税免除は既に導入している自治体でも検討してほしいです。ただし、生活保護世帯や住民税非課税世帯への宿泊税免除はいかがなものかと思います。そもそも生活に困窮しているのに贅沢な旅行に行っていたらおかしいです(所得隠しや資産隠しを疑うべきでしょう)。


 ちなみに、日本で一番入湯税収が多い自治体は神奈川県箱根町ですが、コロナ前の2019年には約8億円の税収がありました。これに対して同町の歳出総額は2023年度予算で約168億円、町税は63億円です。1人1000円の宿泊税を導入すれば、効果はとても大きくなります(コロナ前は年間500万人弱の宿泊客があったので、単純計算だと50億円程度の税収になるはずです)。


 宿泊税は観光振興やインフラの整備だけでなく、感染症再拡大に備えて基金に組み込むなどの使途が考えられます。その分、財政負担が軽くなれば、住民サービスの向上につなげたり、地方交付税を返上(その分、過疎地の自治体の回してあげたり、国に返納)すれば他地域の方もハッピーになれます。地元住民の負担がなく、観光需要も旺盛で円安の今こそ宿泊税導入への抵抗感が一番少ないタイミングでしょう。


 非宿泊客についても観光公害の費用をどう負担してもらうかも課題です。観光業者の売上が増えて法人住民税が増えるからいいという考えもありますが、現在の申告納税制度ではきちんと所得が捕捉できていないのは皆さま周知のとおりです。この点で、消費税は公平で優れた税制だったはずですが(皆さんこれを忘れて低所得者に負担が大きいことや、納税業者の事務負担が大きいことに論点がすり替わってしまい、最適な直間比率という議論が消えてしまったのは残念です、地元住民にも課税されてしまうため、この目的には合いません。日帰り観光客への課税方法について皆さまからのアイデア募集します。


 日本の政治は本当に税金の使い方が下手です。規制というと、官僚が許認可権を維持するような力ずくの規制に頼り、市場原理を活用するという発想に欠けています。税金を使うというと財政を悪化させる使い方を想起してしまいがちですが、財政も好転させる「課税」という形で政策を実現する発想も持って欲しいです。


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