中東旅行のススメ:多くの国は欧米主要国よりも治安良好です
ハマスによるイスラエル侵攻と、その後のイスラエルによる掃討作戦により、イスラム、ユダヤ双方への偏見に満ちた投稿が増えています。かつて、中東関係のビジネスに携わり、アラブ、イスラエル、トルコなど頻繁に出張に行っていた身として大変残念に思います。
こうした偏見の背景にあるのは、無知であることはいうまでもありません。メディア報道にも問題があるかもしれませんが、正しい知識に欠ける方が投稿したSNSのをうのみにしている方がほとんどでないかと思います。
皆様にまずお勧めしたいのが、実際に中東へ行って見聞きすることです。しかし、そこに立ちふさがるのが、「中東は危険な場所である」という多くの方が抱く先入観です。しかし、これも無知が招いてきたフェイク情報です。
2014年に横浜市の小学生100人に対して行われた「中東に対するイメージ」のアンケートによると、およそ80%が「行きたくない」と回答し、理由の大半はテロと結びついていたそうです。当時は、イスラム国(IS)によるテロが相次いでいた時期であり、子供たちがそう思っていたのは無理ありません。しかし、あたかも中東やイスラム教徒が皆同じであるかのような印象を与えるメディアの報道にも問題は多かったではと思います。
しかし、客観的にみて中東が危険ということは正しくありません。
豪州に拠点を持つInstitute for Economics & Peaceという団体が毎年発表しているGlobal Terrorism Index(グローバルテロリズムインデックス)という指数があります。これは世界各地で発生したいわゆる「テロ」に分類される事件の数や被害規模を指数化して、ランキングしたものであり、指数が大きいほど危険とされています。
ここで上位10か国は、以下のようになっています。()はランキング順位(上位ほど危険度が大きい)を示しています。赤字部分は中東の国です。
(1)アフガニスタン 8.822
(2)ブルキナファソ 8.564
(3)ソマリア 8.463
(4)マリ 8.412
(5)シリア 8.161
(6)パキスタン 8.160
(7)イラク 8.139
(8)ナイジェリア 8.065
(9)ミャンマー 7.977
(10)ニジェール 7.616
アフガニスタンやパキスタンを中東に含めるか諸説ありますが、。通常は中央アジア、南アジアに区分されます。上位10か国ではアラブ諸国といえる国はシリアとイラクが相当します。
11位以下で主な中東諸国と日本人旅行者に人気のある欧米・アジアの主要国を比較すると、以下のようになっています。イスラエルとハマスの戦闘前であったことも考慮する必要はありますが(戦闘開始後は外務省はパレスチナ・ガザ地区、およびイスラエルにおけるガザおよびレバノン国境付近の地域からの退避勧告を出しています)、テロのリスクという点でみると、中東諸国は欧米主要国と比べても特に危険というわけではなく、またアラブ産油国は日本よりも安全で、テロのリスクはほとんどないとの評価になっています。
殺人に至らないスリや置き引き、路上での強盗、詐欺行為などはこの評価に反映されていないと見られますが、肌感覚的にも欧米やアジアと比べても中東ははるかに安全だと感じます。
(13)インド 7.175(ご参考)
(16)エジプト 6.632
(21)イラン 5.688
(22)イエメン 5.616
(23)トルコ 5.600
(24)インドネシア 5.502(ご参考)
(25)イスラエル 5.489
(26)タイ 5.430(ご参考)
(30)米国 4.799(ご参考)
(33)パレスチナ 4.611
(34)フランス 4.419(ご参考)
(35)ドイツ 4.242(ご参考)
(42)英国 3.840(ご参考)
(52)レバノン 3.400
(62)日本 2.398(ご参考)
(63)サウジアラビア 2.387
(65)スイス 2.202(ご参考)
(68)ヨルダン 2.033
(69)豪州 1.830(ご参考)
(75)マレーシア 1.357(ご参考)
(76)UAE 1.241
(79)バーレーン 0.826
(89)ベトナム 0.227
(93)クウェート 0
(93)カタール 0
(93)オマーン 0
(93)シンガポール 0(ご参考)
(93)韓国 0(ご参考)
外務省では、海外安全情報を出していますが、危険度1(注意喚起)ならさほど問題ないと考えても差し支えないと思います。なお、中東に駐在している日本人の外交官の方と話してみても、「欧米やアジアで日本企業が多く進出している国への評価は甘くなりがちで、中東には厳しい」との不満が聞こえてきます。外務省の海外安全情報よりも実際には欧米やアジアは危険で、中東は安全と考えた方がよいかもしれません。
また、同じ国でも地域によって状況は大きく異なります。先入観を持たずに、ぜひ中東旅行を検討してみてください。
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