あちこち旅日記

乗り物好きの旅行日記。コスパのよい贅沢な旅がモットー。飛行機、鉄道の搭乗乗車体験記やグルメ情報をご紹介します。

中東旅行のススメ②:お酒が飲める国もあります

 中東旅行に後ろ向きな方には、「お酒が飲めないから楽しくない」と思われている方がいらっしゃるかもしれません。アル中でなくても、旅の楽しみの一つであるお酒が飲めないのはつらいところです。




 確かにイスラム原理主義の国や、戒律の厳しい国では外国人であってもアルコールの販売が禁止されています。しかし、状況は国ごとに大きく異なりますが、外国人であればホテル内ではビールやワインを飲むことができる国が大半です。また、自国民だけでなく外国人の飲酒までも禁じられ、アルコールの持ち込みが禁止されている国でも、密かに密造酒が飲まれています。具体的なことは書けないのですが、私はある国に駐在している日本人のご自宅で密造酒をいただいたことがあります。


 私は夕暮れ時にモスクから大音響で流れてくるアザーン(お祈りを呼びかける歌)を聞きながらビールを飲むのが大好きです(背徳感がなんとも言えません)。


 イスラム教では聖書(コーラン)で飲酒が禁じられていますが、昔は厳格に禁止はされていませんでした。古典詩歌では酒屋や酒場もしばしば登場し、飲酒は宗教上は禁止されていても飲酒禁止は必ずしも遵守されていなかったようです。また、イスラム教において酒が禁じられているのは現世においてであり、天国には酒の流れる川があり、悪酔いの心配もなく自由に飲酒することができるとされてきました。




 イスラム教で飲酒が厳格に禁止された経緯としては、アブドゥッラフマーン・ブン・アウフという人物がムハンマドの弟子たちを食事に招き、その席で酒を飲ませた際に、そのなかの一人がコーランを間違って読んでしまった、という話が伝わっています。


 イスラム教国の中でもコーランの戒律に最も厳しいといわれる国がイランとサウジアラビアですが、イランではイラン・イスラム革命以前は世俗主義がとられ、飲酒に寛容だったようです。


 また、サウジアラビアでも1952年までは飲酒を大目に見ていたそうです。しかし、1951年に当時のミシャリ・ビン・アブドゥルアジズ王子が、イベントで酒を注ぐのを拒否したとして、在ジッダ英領事館のシリル・ウスマン副領事を射殺してしまい、事態は一変。ミシャリ王子は殺人罪で有罪となり、アブドゥルアジズ国王(当時)が翌年に全面的な禁酒令を発布した経緯がありました。


 以下、中東を中心に、イスラム教国における飲酒事情を紹介します。


飲酒文化が存在している国:トルコ、ヨルダン
 トルコではイスラム教徒が99%を占めますが、世俗主義が浸透し、ワインやビールなどをたしなむ現地人も少なくありません。ワインやビールを置いているレストランも多く、トルコワインは欧州などにも輸出されています。アルコール飲料を何の問題もなく入手することができます。
 ヨルダンもイスラム教徒が国民の大半ですが、飲酒には寛容で、酒造メーカーがあります。公共の場での飲酒は禁止されていますが、比較的簡単に酒類を購入できます。厳格なイスラム教徒は飲酒しませんが、世俗派の方で飲酒される方は少なくありません。


イスラム教徒の比率が低い国:レバノン、イスラエル
 レバノンではキリスト教人口が総人口の3分の1を占めており、飲酒文化が存在します。また、イスラエルでは、アラブ系イスラム教徒が人口の2割強を占めていますが、ユダヤ教徒が多数派です。ユダヤ教において酔っ払いとなるような過度な飲酒は避けるべきとされていますが、ワインは「喜びの飲み物」として位置づけられています。神聖な儀式の中で、ワインは神の祝福を受けるシンボルとして重要な役割を果たしています。
 また、中東ではありませんが、インドネシアやマレーシアでは酒造メーカーが存在します。インドネシアではイスラム教徒が99%を占めますが、アチェ州を除き酒の販売が法律で認められています。マレーシアではイスラム教徒の飲酒は禁止されており、違反した場合にはむち打ち刑などの執行令があります。しかし、マレーシアは他民族国家であり、マレー系の比率は6割強にすぎません(主要なところでは、華人系の住民が2割程度占めています)。


外国人の飲酒には寛容な国:サウジ以外のアラブ産油国
 アラブ産油国の多くは、出稼ぎ外国人が多く、外国人のアルコール類の購入や、外国人が宿泊するホテルのレストラン、カフェ、バーなどでの飲酒はほぼ問題ありません。中でもバーレーンは最も寛容と言われています。
 カタール、UAEの主要首長国(アブダビ、ドバイ)、クウェート、オマーンでもイスラム教徒の飲酒は禁じられていますが、外国人はホテル内では飲酒が可能です。また、購入許可証を保有している外国人は指定されたリカーショップで購入できます。
 これらの国の航空会社には、日本に乗り入れているキャリアがありますが(カタール航空、ドバイ拠点のエミレーツ航空、アブダビ拠点のエティハド航空)、いずれもアルコール飲料がサーブされます。


公式には飲酒は禁止だが・・:サウジとイラン
 中東の中でも飲酒に対して厳格に厳しいのがサウジアラビアですが、ここへきてサウジでは規制緩和の動きが報じられています。政府国際コミュニケーションセンター(CIC)の声明によると、「酒類の不正取引に対抗するため」、非イスラム教徒の外交官向けにアルコールの割り当て規制を導入するとしています。また、ロイター通信は計画に詳しい関係者の話として、非イスラム教徒の外交官のみを対象とする初の酒店を首都リヤドに開店する準備が進められていると報じています。


 サウジでは国民・外国人を問わず、若者たちが飲酒が楽しみの一部になってる地下パーティーに繰り返し参加していることは公然の秘密となっているようです。


 外交特権を持たない普通の外国人は、購入できるようになるとはされていませんが、大きな変化として注目されているようです。サウジアラビアでは、以前非イスラム教徒の外国人観光客を受けて入れていませんでしたが、2020年より外国人観光客の受け入れを開始しています。将来的に外国人観光客の飲酒が認められるかもしれません。


 また、イランでも公式には飲酒は禁止されていますが、実際は多くの国民がひそかに飲酒を楽しんでいるといわれています。ただし、密造酒にメチルアルコールが混入し、中毒による死亡事故が報告されており、注意が必要です。


参考になったら、「プロフィール」のバナーをクリックお願いします。過去の記事リストがあります。シリーズ通してご覧いただければ嬉しいです。

×

非ログインユーザーとして返信する