メディアが報じない中東の真実⑤:イスラエルは米国の言うことをきかなくなっている
イスラエルとハマスの停戦がなかなか進まない最大の要因は米国の仲裁能力の低下にある、とこれまでも述べてきました。これには選挙イヤーにある米国に余力がないこともありますが、バイデン政権発足後、イスラエルとの関係が冷え込んでいたことも指摘する必要があります。
イスラエルは2020年にUAE、バーレーン、スーダン、モロッコのアラブ4か国と相次いで国交を正常化させましたが、アブラハム合意と呼ばれるこの画期的な和解を仲立ちしたのが、米国のトランプ大統領でした。このため、イスラエルではトランプ氏の功績をたたえ、ヨルダン川西岸地域の地名を「トランプハイツ」と名付け、強い謝意を示していました。トランプ氏の娘婿であるクシュナー上級顧問(当時)がユダヤ系であったことも影響していたかもしれませんが、キリスト教福音派を支持基盤とする共和党政権がイスラエル寄りの政策をとっていたことは間違いありません。
これに対して、バイデン氏が大統領選挙で当選を確実にした日のイスラエル政府の対応には冷たいものがありました。大半の友好国・同盟国がすぐさま祝電を送ったのに対し、当時のネタニヤフ首相(その後一度下野)がバイデン氏に「偉大な友人」と述べて祝意を表明したものの、異例ともいえる1日遅れのことでした。バイデン氏はトランプ大統領のイランやパレスチナに対する強硬政策と一線を画すとみられていたこともあったとみられます。これに対して、バイデン大統領がイスラエルを訪問したのは大統領就任から1年半ほど経過した2022年7月になってからでした。
米国歴代民主党政権は、中東和平に積極的に関与してきましたが、バランスのとれた対応を行い、人権問題を重視した外交を行ってきました。これはイスラエルからみると、トランプ政権と比べるとバイデン政権は利用価値は低いということに映ります。米国から「イスラエルは軍事行動を自制するように」と言わても、イスラエルには米国に従う義理はさほどありません。米国が仲裁しようとしても、イスラエル政府はもはやいうことを聞かなくなってきている感があります。
続きは2月20日を予定しています。
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