ガザ紛争の真相を探る②:中国も怪しいが・・・
イランがガザ紛争の黒幕でないとしたら、本当の黒幕は誰でしょうか。①国連機関の不正を見逃せる影響力、②ハマスの軍事費を支援できる資金力、③強力な自国の軍事力を有し、④ガザ紛争で恩恵を受けている国、ということで考えていくと、まず思いつくのが中国です。ガザ紛争への対応でアメリカが手一杯となり、東アジアでの紛争に関与する余力が低下していることは確かです。
実際に中国は中東情勢を混乱させることをやっていました。それが、昨年3月10日のサウジアラビアとイランの国交正常化発表です。両国は2016年に国交を断絶していましたが、中国の仲介によって国交回復に合意しました。北京で行われた代表者会合では2ヶ月以内にそれぞれの大使館を再開することで合意に至ったものです。
中国は、これを「中東の平和に貢献した」対外宣伝に使っていますが、見方を変えればサウジとイスラエルとの国交正常化を難しくし、また、中東におけるパワーバランスを崩す結果なってしまったことは否めません。
例えば、イエメンの反政府武装組織フーシ派の活動の活発化です。イランが支援するフーシ派は、サウジを中心とする中東有志連合軍との対立し、サウジの石油関連施設に爆撃を繰り返していました。また、サウジもフーシ派の軍事拠点への空爆を行い、フーシ派はイスラエルに攻撃することも、紅海を航行する外国船舶を攻撃・拿捕することもほとんどありませんでした。
しかし、サウジとイランの国交が正常化したことで、サウジとフーシ派との戦闘が停止し、フーシ派にイスラエル本土や紅海を航行する外国船舶を攻撃する余力が生じたことは否めません。
中国は歴史的にも中東紛争にほとんど介入してこなかっただけに、ガザ地区での活動への警戒が薄いことも幸いしていたかもしれません。
しかし、中国=黒幕説を主張するには決め手を欠きます。なぜならば、この紛争で中国が被る経済的損失も少なくないからです。今や世界最大の資源輸入国である中国にとって、原油価格の高騰はデメリット以外の何物でもありません。また、欧州への工業製品の輸出に際して、中国からのコンテナ船は紅海を航行します。フーシ派はイスラエルに関係のある船のみを攻撃対象としているとしていますが、荷主が誰かまではチェックできません。さらに、コンテナ船が喜望峰を迂回すると、北米航路も含めて船舶不足が生じ、中国の製品輸出やパーツ類の輸入にも大きく支障が出ることになります。
「部族の損得勘定」「敵の敵は味方」で考える中東理解の原則からすると、中国黒幕説はメインシナリオにはなりえません。するとやはり怪しいのはあの国と考えざるを得ません。
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