あちこち旅日記

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日本の報道は本当に不自由なのか?:諸外国と比較して

 海外に行く際、ビジネスにしろ観光にしろ現地情報の収集に際してお世話になるのがメディアによる報道です。


 前回、中東におけるメディアの信頼度についてコメントした際、「国境なき記者団」による「報道の自由」について言及しました。中東各国、とりわけアラブの君主制国家や権威主義国家で報道規制や記者の安全性が脅かされており、評価が低いという事実を紹介しました。


 ところで、「国境なき記者団」による「報道の自由」のランキングでは日本の評価も68位(2022年は71位)と民主主義国家では下位に沈んでいます。これは先進国の民主主義国家で低いだけでなく、アジアの主要国の現状と比べても日本の低評価が際立っています。


主要国・地域の報道の自由度ランキング
(2023年、カッコ内は2022年)
1.ノルウエー(1)
2.アイルランド(6)
3.デンマーク(2)
21.ドイツ(16)
24.フランス(26)
26.英国(24)
35.台湾(35)
41.イタリア(58)
45.米国(42)
47.韓国(47)
68.日本(71)
106.タイ(115)
129.シンガポール(139)
140.香港(148)
161.インド(150)
164.ロシア(156)
179.中国(175)


 日頃、日本は言論の自由が保証されており、日本に生まれたことをよかったと思っている私にとって、この結果は大きな違和感があります。また、私と同様な違和感を感じる方も少なくないようです。今回は、この調査結果を検証してみたいと思います。


 このランキングには政府による規制や、ジャーナリストの身の安全など、様々な要素が反映されており、ジャーナリストへの87項目からなるアンケート調査が反映されている模様です。回答者は各対象国・地域のメディア専門家・弁護士・社会学者で、130カ国の特派員が評価した「ジャーナリストに対する暴力の威嚇・行使」のデータを組み合わせたものを指標としています。


 そもそも、国境なき記者団(英語: Reporters Without Borders [RWB])とはどんな組織なのでしょうか。言論の自由(または報道の自由)の擁護を目的としたジャーナリストによる非政府組織とされています。資金全体の約2割は米加・西欧の各国政府および組織から出ていることから、欧米の視点が強く反映されており、2008年4月にはメナール事務局長(当時)が北京オリンピックの聖火リレーを妨害するなど、過激な行動もあります。このため、同調査が中立・客観的に行われているかはやや疑問視されます。


 ところで、日本の過去の評価をみると、過去ピークの2010年には11位、翌2011年には22位と高位にありましたが、民主党政権から自公連立政権になった2013年には52位に大幅に順位を落とし、以後60~70位代で低迷しています(2012年は調査なし)。これはG7最低の評価です。


 2013年に大幅に順位を落とした理由の一つに挙げられているのが、「当局が福島第一原子力発電所における事故に直接的または間接的に関連するテーマを独立して報道することを禁止する措置をとっていること」を挙げています。しかし、原発事故が起きたのは2011年3月であり、2011年の下落を説明できても、2013年の大幅下落を全て説明できるものではありません。そもそも、原発に関する報道は数多くあり、こうした理由が挙げられていること自体理解に苦しみます。


 この他には以下の要因がランキング下落の要因として挙げられています。


特定秘密保護法の成立
 2014年にはさらに59位まで順位を下げていますが、報告書では、その理由として前年末に制定された特定秘密保護法があげられていました。この法律により、「福島原発や日米関係などの重要なテーマがタブーとして公開されなくなる」としていました。もっとも、その後も両テーマでの報道は数多く行われており、問題視される事態は起きていません。


 特定秘密保護法は、民主党政権時代に起きた2010 年の尖閣沖の中国漁船衝突事件がきっかけとなったといわれています。この事件を隠蔽しようとした民主党政権が法案制定に積極的であったといわれています。しかし、実際に成立した法案は第二次安倍内閣によってつくられたもので、4分野(防衛、外交、スパイ、テロ)に限定されています。また、こうした分野での機密保持が行われていない国はほとんどないと思われます。中国漁船衝突事件についてはむしろ積極的に開示すべきであったと内閣府では見解を示していました。


記者会見の出席人数の制限
 2020年に、日本政府が新型コロナウイルス感染症対策を理由に、記者会見に招待する記者の数を大幅に減らしたことも挙げられています。もっとも、こうした措置は政府記者会見だけでなく、非政府部門でも行われていました。当時の情勢を鑑みると、記者会見は、政府高官の感染リスクを減らすためにも、オンライン開催がむしろ望まれたのではないでしょうか。


特定メディアグループへの集中化
 同団体では、日本では新聞と放送局の相互所有に対する規制がないため、極端なメディア集中が起こっていることも問題視しています。もっとも、時代とともにメディアの機能は変遷していくものであり、新聞社がTV局、オンラインニュースサイトなどに業態をシフトさせていくことは当然のことでしょう。


 そもそも、こうした所有構造は2012年以降にできたものでなく、ランキング下落を説明できるものではありません。


記者クラブ制度への不満
 同団体では、記者クラブ制度に関して、記者の自己検閲を誘発し、フリーランサーや外国人記者に対する露骨な差別を表している主張しています。こうした不利益を被っているジャーナリストがアンケートで不満を強めているとする見方が少なくありません。


 もっとも、国内の大手メディアが主体の記者クラブに対して、海外メディア主体の類似団体として「日本外国特派員協会」というのがありますが、こちらの歴史をみるとよりひどいことをしていたことがわかります。


 1945年に第二次世界大戦が終結し日本が連合国軍の占領下におかれると、日本新聞遵則(日本出版法)が制定され、日本の全てのメディアに対して検閲を含む情報統制が開始されました。その際、このような情報統制を受けずに日本で活動する連合国および中立国のメディアの記者やジャーナリストをサポートする組織のとして設立された「東京特派員クラブ」が「日本外国特派員協会」の前身でした。


結局は内外メディアの利権争いの道具に使われているだけでは?

 こうしてみると、報道の自由度に関する日本のランキング下落は、内外メディアの間の利権争いの象徴にほかならないと思えてきます。また、アンケート回答者が左派的思想を持つ特定のグループに偏り、公正な調査が行われていないのではとの疑念が残ります。既に指摘したように「国境なき記者団」についても果たして公正な運営が行われているか怪しいものがあります。


 我々はこの結果を気にせず、自由に意見を言える日本を誇りに思うべきではないでしょうか。むしろ、自由すぎることの弊害(SNSを通じた外国政府によるフェイク情報の流布、週刊誌やゴロつきジャーナリストによる脅迫まがいの行為や、部数拡大のための慎重さを欠く露骨なスキャンダル報道)が目立つようになっていることを放置しておいてよいのか考える時期に来ているのではないでしょうか。


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