あちこち旅日記

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大都市部のタクシー不足の根本的問題は何か

 先週来、深刻化する京都のタクシー不足が報じられ話題になっています。京都の場合、バスも混雑しており、「観光公害」と言われるようになっています。


 もっとも、タクシー不足は京都だけの問題ではありません。東京でもタクシー不足が顕在化しており、特に朝の時間帯は電話予約もほとんど機能していない状況です。


 一方で、タクシーの運転手さんからは待遇の厳しさも指摘されており、なり手も不足していると報じられています。




 
日本のタクシー料金は安すぎるとはいえない


 ではタクシー料金を引き上れば、タクシー不足が解消され、運転手さんの待遇改善も進むのでしょうか。


 まず、日本のタクシー料金を諸外国と比較してみましょう。日本(東京23区)、ニューヨーク、ロンドン、香港、シンガポールの2kmを比較すると、以下のようになります。為替レートは1ドル=140円、1ポンド=180円、1香港ドル=18円、1シンガポールドル=105円で換算し、ニューヨークは慣習上チップを20%上乗せしました。時間料金、特定地域に入る場合のサーチャージ、荷物料金、呼び出し料金、深夜料金は考慮していません。ロンドンは時間帯により大きく異なるので、最安値で示しています。


 東京 900円(東京タクシー協会)
 ニューヨーク 1320円
 ロンドン 1370円(最安値)
 香港 432円(香港島または九龍)
 シンガポール 725円


 また、10kmでは以下のようになります。


 東京4,000円(東京タクシー協会)
 ニューヨーク 5,870円
 ロンドン 5,000円(最安値)
 香港 1,656円(香港島または九龍)
 シンガポール 2,825円


 日本では、大きい荷物はタダでトランクに入れていただけますが、外国では通常課金されます。また、空港乗り入れ料金や、大都市の中心に入るにもサーチャージを課されたりすることが多いのですが、こうした点を考慮すると、東京のタクシー料金は円安もありニューヨークやロンドンと比べると格安になったのは間違いありません。しかし、日本よりも所得水準を大幅に上回るようになった香港やシンガポールと比べ割高な東京のタクシー料金は、気軽には利用できない水準であることには変わりがありません。



料金や台数は需給を反映しているわけではない
 また、実際にタクシーが足りないからといって、すぐに値上げができず、また、タクシー会社の新規参入が行われるわけでも、台数が増加するわけではありません。タクシー料金や台数は当局の許認可を受けて決定されるものであり、需給を反映した市場原理が効いているものではありません。
 また、運転手さんの高齢化が進む一方で、若い方のなり手が少なくなってしまっている現状があります。タクシー会社も運転手がいないために営業に使われていないタクシーもあるようです。

   コロナ禍で離職した運転手さんが戻ってきていないことも指摘できます。このためタクシー不足は世界中で起きています。ウーバーの料金も大幅に上がってきており、世界的にサービス価格の上昇によるインフレが進んでいます。



なぜ香港やシンガポールでは料金が安いのか
 では、なぜ香港やシンガポールでは安いタクシー料金でもやっていけるのでしょうか。もちろん、タクシーの運転手さんは過酷な職業であり、決して好待遇ではありません。タクシーの営業ライセンスを取得することは難しいため、相撲の親方株のように値段が急騰し、投機対象として売買されている模様です。タクシー会社も日々の営業で稼ごうとは思っていないのかもしれません。
 一方で、香港やシンガポールでは東京と比べて交通渋滞が少ないことが指摘できます。これは自動車取得に係る登録税が高いことや、自動車の輸入関税が高いため、また駐車場の料金も東京よりもはるかに高額です。このため、所得水準が高いにもかかわらず、一般庶民が自家用車を保有することが難しいことがあります。
 タクシーの運転手さんにとって、渋滞に巻き込まれることは実入りの減少になります。時間料金を考慮しても渋滞はない方がいいに決まっています。


ダイナミックプライシングの導入を
 大都市部だけでなく、日本では特定時間帯にタクシー不足が深刻になります。終電後はもちろん、一番不足感が強まるのが朝8時前後です。病院に行く方が多いこの時間帯にタクシー不足を解消していく必要があります。
 日本ではこれまで、需給を反映したダイナミックプライシングが普及してきませんでしたが、こうした不足時間帯に供給を増やす仕組みが必要になってきているのではと思います。タクシーアプリが普及してきていることもあり、需給を反映した料金を予約時に提示できるような仕組みを作っていけば、この時間に運行するタクシーが増え、問題が緩和されていくのではと思います。
 日本ではウーバーなどのライドシェアによる白タク営業は認められていませんが、イスラエルのタクシーシステムが参考になります。イスラエルには大手のGETTをはじめとしたライドシェアが数多くありますが、日本と同様に白タク営業が認められていないため現実的にはタクシーアプリとして使われています。空車で走っている流しのタクシーを捕まえることは困難ですが、現地の方は何も不便を感じていないようです。イスラエルのタクシー料金は公定料金ですが、ダイナミックプライシングでも事前に料金を決めておく仕みならば、逆に安心感が広がるのではないでしょうか。


空車時間を減らせばタクシー経営の効率性も向上
 また、香港、シンガポールでは流しのタクシーも多いのですが、空車で流している時間が少なく、乗客が下車すれば簡単に次の乗客を拾えることが多いです。タクシーの供給も多い代わりに、需要も多いためです。
 どれだけ実車率を高められるかは、運転手さんの経験次第とされてきました。しかし、AI技術の進歩により実車率を高められるようにもなりつつあります。


大都市では自家用車保有を制限してもよいのでは
 京都や東京でのタクシー不足を解消する最も有効な方法は、自家用車の保有を制限し交通渋滞を減らす一方で、タクシーの供給を大幅に増やすことです。これは、香港やシンガポールの動向を踏まえれば容易に理解できます。


 そもそも、大都市部で自家用車がなくても十分生活していけます(むしろ邪魔です)。課税などで自家用車の保有コストを高くすれば、タクシーを利用した方が安くすみます。高齢者の運転も減り、免許返納を促す効果も期待できます。

 バスの混雑についても、利用者を減らすよりも、バスを増便する発想はできないのでしょうか。バスの本数が大幅に増えれば(2~3分に1本来れば)、地元の方もさらに利用しやすくなるはずです。観光公害との声も減るでしょう。


 また、自家用車の台数を減らせば、地球温暖化対策にもなります。


 もっとも、タクシーやバスにしても、運転手の人材不足という問題は深刻です。バスが簡単に増便できない理由はここにあるはずです。いずれは、自動運転により問題は解決されるかもしれませんが、まだ実現時期は見通せません。しかし、自家用車の保有制限と運転手さんの待遇改善を合わせて進めていけば、挑戦する方も増えていくのではないでしょうか(自動車メーカーからの反発は当然予想されますが、これを抑えるのが政治の役割です)。今後、AIの普及により減少していく雇用の受け皿にもなり得ます。


もっと中古車を活用したら?
 日本のタクシーの特色として、海外と比べてどれもピカピカの新車同様の車が多いことも挙げられます。しかし、これも本当に必要でしょうか。実際に、香港やシンガポールのタクシーは結構オンボロ車が多いです(しかし、料金は同じで、利用者も避けて乗るようなことはしていません)。
 きれいな車はVIP用に使うハイヤーに任せて、タクシーには多少傷があったり塗装が剥げていても、コストが安い中古車を活用したらいかがでしょうか(さすがに事故車だと引いてしまいますが・・・)。設備費が減少する分、タクシー会社は実車率向上のためのAI投資や運転手さんの待遇改善に使えます。カーナビやドライブレコーダーはもはや必須ですが、自動ドアなど全くもって不要でしょう。
 大都市部と比べて料金が安く抑えられ、実車率も低い地方部ではタクシー運転手さんの待遇の厳しさが報じられています。地方部こそ、中古タクシーを積極的に導入したらいかがでしょうか。



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