あちこち旅日記

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バスを止めるな!:長電バスが日曜日の一部路線を全面運休

 長野市と言えば、1月21日にショッキングなニュースを見ました。それは、地元のバス会社・長電バスが長野市内の一部路線を日曜日全面運休に踏み切ったことです(発表は昨年12月だったようです)。


 全国的に路線バス路線の廃止が相次いでいますが、これまでは利用者の減少によるものが大半でした。しかし、長電バスのケースでは運転手が確保できないことによるものです(99人必要なところ74人しか確保できないようです)。こうした運転手不足による路線バスの運休や廃止が全国的に増えてきています。


 同社では、これまでも黒字の貸し切りバスの運行を制限してでも赤字事業の路線バスを維持してきてくれていたようです。しかし、深刻な運転手不足はどうにもできません。4月より「働き方改革法」による時間外労働時間等の制限が、これまで免除されてきたドライバーにも適用されることになるため、さらに状況は深刻化します。もはや経営努力で解決できる問題ではなくなってきています。


 長野市に行った際に、現地の知人に聞いてみたのですが、意外に知らなかったという人が大半でした。皆さん、普段は自分で車を運転して通勤しているので、路線バスのことなど関心がないようです。日曜のみの運休であることから、通勤・通学や高齢者の通院には支障もないようですが、TVニュースでは地元高校生が「日曜日に部活に行けない」「大学入試どうしよう」と切実な声を発していました。


 バスの運転手不足は、高齢化により引退する方がいらっしゃる一方、バス運転手を目指す若い方が減っていることに起因しています。少子化だけでなく、バス運転手の待遇が悪く、大型2種免許の取得にもお金がかかるため、運転手を志望する若い方が減ってきている面もあります。


 では待遇を改善すればよいと言われるかもしれませんが、そうすればバス会社の運行コストがかさみ、運賃に跳ね返ってきます。利用者の反発を招き、利用者減少を招くであろうことは容易に推察されます。


 日本経済新聞などでは、外国人材が働く「特定技能」の対象に「自動車運送業」など4分野を追加する方向で関係省庁が調整に入ったと報じています。しかし、外国人の活用は緊急避難措置にはなるものの、根本的な解決にはならず様々な意味でリスクを伴います。




 まず、交通法規が異なり日本語の標識などを理解できない外国人運転手では事故のリスクが高まります(日本語ができる人材を海外から招けば、日本人よりもかなりの高給を払う必要があるかもしれません)。また、賃金の上昇が抑えられれば、日本人がその職に就くことが事実上難しくなります。実際に、介護や看護、建築業(特に解体業)などでは、日本人の希望者が激減し、慢性的な人手不足に陥っています。「格差解消は必要だ、でも値上げはいやだ」というのは「自分の賃上げは歓迎だが、他人の賃上げはいやだ」と同じであまりに身勝手です。


 欧州では、人手不足対応のために外国人労働力を積極的に採用した国があります。しかし、仕事を奪われた若年層の失業率を高める結果となってしまいました。スキルが限られる若年層は低賃金の外国人と非スキル労働力と直接競合するためです。結果、生活基盤を確立できない若年層が増え、晩婚化が進み、少子化を一層深刻化させてしまいました。失業した若者が犯罪に走り、治安も悪化した国もあります。中東でもエッセンシャルワーカーは外国人が中心となっていますが、アラブ人は賃金が安いこうした仕事につきたがりません。それなら失業したままでも結構というスタンスです。アラブ産油国では欧州と違い犯罪は少ないのですが、その分監視社会化しています(町中防犯カメラがあちこちに設置され、秘密警察が監視しているとの噂も聞きます)。


 TVニュースは連日震災と「政治とカネの問題」のニュースで持ち切りですが、少子化問題についてはあまりに軽視されている感があります。100年後の2120年には日本の人口は5000万人割れが見込まれています。第二次大戦で亡くなった民間人が80万人だったことを考えると、事の深刻さがいかに大きいかわかります(今後100年間で第二次大戦100回分の人口を失うことになります)。もはやなり振り構っていられる状況ではありません。


 地方部の方にお叱りを受ける覚悟で言えば、運転手不足を解消するために①ガソリンにかかる新税を設定し、それをバス会社に補助金として与え、運転手の待遇を地域の平均賃金以上に引き上げる(日本のガソリン価格は今や先進国でも割安な水準です)、②陸上自衛隊で公費で大型免許を取得できる制度を設けるとともに新卒採用を増やし、退役後の人材(自衛隊の定年年齢は公務員一般よりも低い)をバス会社に斡旋してもらう、などの方策を提案したいです。


 このままではバス路線がなくなり、高齢者も車がないと外出できなくなり、外国人観光客もレンタカー利用を強いられるようになります。公共交通機関の衰退は地球温暖化対策に逆行するだけでなく、事故の多発にもつながります。渋滞が増え、トラックドライバーの不足問題も一層深刻化します。


 過去30年間で日本人の平均就労時間は年々減少しています。さすがにドライバーの長時間労働は目に余るものがあり、事故防止のためにも時短は必要ですが、その分、他の職種がもっと働いてあげるか、労働生産性を引き上げていかなければ経済はマイナス成長に陥ります。いわゆる「130万円の壁」など、就労時間を抑制している問題を解決することに加え、女性やシニア層に働くインセンティブを与え、意欲のある元気な方に少しでも多く働いてもらえることが肝要です。そのためには所得税の累進課税の緩和を緩和し、所得のある高齢者への年金の減額もやめて欲しいです。


 景気対策や格差解消のためには所得税減税よりも消費税をと主張する方が多いようですが、そもそも人手不足下では景気対策は不要で、かえってインフレを助長するだけです。どうしても格差是正ということであれば、相続税を思い切って増税する方が望ましいと考えます。


 「働き方改革」とは労働時間を単に短縮することだけではないはずです。仕事のやり方を変えて、少ない労働時間でより多くの生産を行ってこそ所得は増加します。生産性を上げないと、賃上げはインフレを高進させるだけで、実質賃金は上昇していきません。


 「労働時間を短縮せよ」「でも合理化はいやだ」では日本人の所得が上がらないのは当然です。デジタル化を徹底して進め、国民がタイムパフォーマンスを意識していくように促すしかありません。その際、「今のままでも便利だ」「高齢者には無理だ」は禁句です。「変われない」国や国民は経済発展から取り残され、貧しくなる一方です。高齢者だからと言って甘えは許されません。


 以前、「経済なき道徳は戯言であり、道徳なき経済は犯罪である」という二宮尊徳の言葉を紹介しました。二宮尊徳が今生きていたら、勤勉さとイノベーションマインドを失う日本人と、日本人の経済リテラシーの低さにどんな感想を抱くのでしょうか。




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