中東旅行のススメ③:アラビア語ができなくても大丈夫
中東だけではないのですが、旅行で不安になるのは言葉の問題です。特にアラビア語は、筆記体で書かれると何が何だかわか分からず、とても手ごわそうに見えます。
しかし、心配することはありません。アラブ産油国の場合、皆さん英語がとても堪能で、ほとんどの公共施設や道路標識などは、英語との併記がされています。高校卒業レベルの英語(英検準二級レベル)の方ならば、まずコミニュケーションには苦労しないと思います(これもダメというならば、個人での海外旅行そのものが難しいです)。
アラブ産油国では、労働力不足を補うため、外国人労働力に大きく依存しています。UAEやカタールでは外国人が9割程度を占めています。こうした外国人労働力は、家事労働(メイド)や建設作業のほか、ホテル、レストラン、タクシーなどのサービス業で多く働いています。また、出身も多様で、アラブ圏でも所得の低い非産油国や、インド、パキスタン、インドネシア、フィリピン、アフリカ諸国、東欧などからも来ています。その多くはイスラム教徒ですが、非イスラム教徒もいます。また、皆が必ずしもアラビア語が話せるとは限りません(むしろ過半数はアラビア語を解しません)。
こうした出稼ぎ外国人とのコミニュケーションは主に英語で行われています。家事労働者はフィリピン出身者が多いのですが、雇用主であるアラブ人マダムも英語を話せないと、うまく使うことができません。もともと、アラブは英国が植民地支配してきたことから英語は普及しており、ごく自然に英語でのコミニュケーションが成立しています。
おそらく、英語圏以外では、北欧とともに英語の通用度が一番高いのがアラブ圏ではないでしょうか。
また、世界各地から移民を受け入れてきたイスラエルも同様に英語の通用度が高いです。公共施設や交通標識もヘブライ語、アラビア語、英語の3か国の併記となっています。レバノンも、世界各地に移民を輩出しており、学校でも英語での教育が普及しています。また、多国語を話す人材が多くいます。例えば、レバノン系ブラジル移民の子孫であるカルロス・ゴーン容疑者(日産元会長)はフランスに留学し、ブラジル、レバノン、フランスの3か国国籍を有し、ポルトガル語、アラビア語、フランス語、英語(そして日本語?)も堪能なようです。
アラブ産油国以外でも意外に英語が通用するのはイランです。イランは米国と国交を断絶するなど敵対関係にあります。しかし、1978年のイランイスラム革命より前の王政時代は、親米政権でした。また、米国との国交断絶後も欧州とは良好な関係を維持してきたことから、英語がコミニュケーションに使われてきました。イランではアラビア語を基本とした文字を使用するペルシャ語が話されていますが、ホテルやオフィス、観光施設なのでは英語でも困ることはなく、英語を理解するタクシー運転手も多いようです。
比較的英語の通用度が低いのが、中東の経済大国であるトルコです。もっとも、それでも日本よりは通用度は高いという印象です。
また、20世紀初頭に初代大統領に就任した建国の父ケマル・アタテュルクの「トルコ革命」によって、国家の根幹となる原理として政教分離(世俗主義)を断行。憲法からイスラム教を国教とする条文を削除し、トルコ語にはアラビア文字に替わって、アルファベットを当てました。このため、意味はわからなくても看板や標識にある地名は理解することができます。例えれば、言葉はわからいが、アルファベットを使っているインドネシアやベトナムといったイメージでしょうか。
アラブ、トルコ、ペルシャ、ユダヤ・・・文化が異なり、相互に対立を繰り返してきた歴史はありますが、来客にフレンドリーで親日ということでは共通しています。皆さまもぜひ一度行かれてはいかがでしょうか。
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