食品工場やミュージアム見学も楽しそうな麦都館林:北関東旅行記⑦
東武の「ふらっとりょうもうフリーきっぷ」の有効期限は3日ありましたが、用事がいろいろと入っていたので、今回は日帰りしてまた出直してくることにしました。帰路はこの地域の交通の要衝・館林に戻り、ここから特急りょうもう号に乗車しました。
東武鉄道の特急には「リバティ」もあり、「りょうもう」との乗り比べをしたかったのですが、あいにく都合のよい時刻の列車がなく利用できませんした。次回はぜひ乗車してみたいです。
ところで、単なる乗り継ぎ地だと思っていた館林ですが、意外な魅力を発見しました。館林駅の近くには、食品工場やミュージアムなどが多く集積し、こうした施設を巡るのもおもしろそうです。
館林には伝統的に麦食文化があり、「百年小麦」のブランド化に力を入れています。江戸時代には館林藩から将軍家へ小麦粉が献上され。明治期になると麦を生かした近代製粉業や醸造業が興り、“麦都”となりました。その後、館林では、麦を原料とした麦落雁(むぎらくがん)やうどん、醤油が名産品となりました。
中でも、その先頭を担ってきたのは、日本最大の製粉メーカーである日清製粉(現日清製粉グループホールディングス)です。日清製粉の前身である館林製粉が1900年(明治33年)に当地で正田貞一郎達により設立され、翌1901年(明治34年)に日本初の機械製粉を行っています。
1907年(明治40年)に横浜市で日清製粉(旧)が設立されましたが、工場建設中から日露戦争後の反動不況で事業継続が不安になってきたことから、同社は三井物産の仲介で館林製粉と合併しました。この合併の際の新社名に館林製粉ではなく日清製粉の名称を採用しましたが、合併後に両社の社長が退任したため、正田貞一郎が専務取締役として事実上のトップとして日清製粉を経営することになりました。ちなみに、正田家は美智子上皇后陛下のご実家です。
館林工場は既に閉鎖されていますが、日清製粉の創業の地と位置付けられています。館林駅西口すぐに、製粉ミュージアムがあり、週末も16:00までオープンしています。
また、美智子上皇后陛下のご実家の正田家ですが、館林に本社を置く正田醤油創業家の分家に当たります。館林駅には正田醤油の大きな看板があります。同社はサッカーJリーグ(J2)のザスパ草津のホームである群馬県立敷島公園県営陸上競技場の命名権を取得しており、同競技場は「正田醤油スタジアム」として有名です。
正田醤油の起源ですが、江戸時代から米穀商を営んでいた三代正田文右衛門がキッコーマンの創業家の一つである二代茂木房五郎より醤油醸造業を勧められ、1873年(明治6年)に創業したのが起源となっています。館林の正田記念館に茂木房五郎より贈られた醤油醸造に関する経営指導書があり、屋号として「キッコーショウ」を使っています。醤油は大豆とともに小麦を原料として使用していますが、小麦の生産地であった館林は、当時最適な醤油の生産地でした。
正田醤油は館林東工場の見学が可能です(4~11月まで、平日のみ、要予約)。
また、館林駅西口すぐ(徒歩2分)に正田記念館があります(平日のみ、要予約)。
そのキッコーマンもかつて太田市世良田(徳川氏発祥の地として以前報告しました)に焼酎工場を保有していました(キッコーマンは「トライアングル」というブランドで焼酎を製造・販売していました)。工場は1996年に稼働を開始しましたが、2005年にサッポロホールディングスに譲渡し撤退しています。こうしてみると、館林が大手食品メーカーといろいろなつながりがあるのがわかります。
館林では、地元産の小麦を使ったうどんも有名です。皇家、宮家ご用達の理由も正田家の歴史を見れば納得ですね。
茂林寺前にも、百年小麦に繭を練り込んだ「まゆ玉」うどんお店がありました(満腹だったのと、蚕を想像してしまい不気味だったので食べませんでした)。
また、館林は牛乳の生産地でもあります。この牛乳を利用したカルピスの工場も館林にあり、工場(「カルピス」みらいのミュージアム)見学も可能です。
ブランド総合研究所が毎年「都道府県魅力度ランキング」を発表していますが、2022年調査では47都道府県中、栃木県が40位、群馬県が44位でした。ちなみに、栃木県は2020年調査では全国最下位でした。しかし、実際に行ってみると、両県にまたがる両毛地域には見どころがいろいろ多く、また行きたいと思えるところでした。
今回の北関東の旅シリーズは以下ご参照ください。
北千住から東武特急りょうもう号に乗車:北関東旅行記① - あちこち旅日記
徳川氏発祥の地「世良田」:北関東旅行記② - あちこち旅日記
渡良瀬川をわたり足利学校に登校しました:北関東旅行記③ - あちこち旅日記
佐野のご当地ラーメンをいただく:北関東旅行記④ - あちこち旅日記
商魂たくましい?佐野厄除け大師を訪ねる:北関東旅行記⑤ - あちこち旅日記
ぶんぶく茶釜の舞台・茂林寺:北関東旅行記⑥ - あちこち旅日記
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